「素の自分」に戻る場である家。その家の中でストレスを感じていたら、ダメージが大きいことは想像がつきます。企業や個人を対象にした環境改善の専門家、永田広美さんに家事ストレスの「正体」と対処法を聞きました。

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自分にとってベストでない物と暮らすうちに、自分のベストも分からなくなる… (C)PIXTA
自分にとってベストでない物と暮らすうちに、自分のベストも分からなくなる… (C)PIXTA

 雑然としたオフィス、書類が積み上げられたデスク……。働く人の心身や企業の業績にも影響しかねない、オフィス環境の改善コンサルティングを手掛けるカルチャリアの永田広美さん。これまで数々の「片付けられないデスク」や、「汚部屋と化した社長室」までもすっきりとよみがえらせてきたそうです。

 その手法は、環境のなかにあるさまざまな物を分類し、同じ種類ごとにひたすら分けていくもの。「型付け」と呼ぶこの手法、実はオフィスだけでなく個人の家にも全く同じように適用できるといいます。

 物を分けていくうちに、その背景にある重要なことが分かってきます。例えば、「家事ストレスと一言で言うけど、その原因は実は家事ではありません」(永田さん)。では、本当の原因は何でしょうか。

「家事ストレスの原因は家事ではない」

 今回の取材で編集部は、約20人の働く女性に家事の悩みを詳しく聞きました。そのうちの一人、30代の女性は「仕事が忙しく、家にいる時間が短いのでいつも散らかったまま。片付けができていないことが恥ずかしいし、罪悪感を覚える」といいます。同じように「家事ができていない罪悪感がある」と話す女性は他にもいました。

 これに対して永田さんは、「罪悪感の理由は『本当はもっとすてきに暮らせるはずなのに』とか、他の誰かと比べて『○○さんはちゃんとできるのに』などと考えるせい。その根本は、自分ではなく他人の基準で自分自身を測っていることです」。基準になっているのは自分の母親だったり、SNSやテレビで見聞きした「家事ができるすてきな人」だったり。

 さらには、「思い通りにいかない仕事や人間関係など、人生のさまざまな要因からくるストレスを家事のストレスにしていることが多い」(永田さん)とも。確かに、「仕事が忙し過ぎて片付ける時間がない」「いつも自分ばかり家事をしている」といったイライラは、家事そのものが原因ではありません。

 家事に罪悪感を抱えている人は、そもそも自分自身の目的、本当に何をしたいのか、どうなりたいのかが分からなくなっていると永田さんは言います。「本当にやりたいことや、あるべき自分の姿が明確なら、もっと家事の手を抜いてでもそのための時間をつくろうと思うはず。できないからと気にしたりはしませんよね」

<次のページからの内容>
● ストレスを減らすには、まず物を「分ける」
● 片付けとは「捨てる」ことではない
● 自分の目的に合う「ベストな物」を選抜する
● 具体的な自分のゴールが描けるようになる