両極端な役を演じ分けて人気が浸透

 菅田さんは、「共喰い」では「暴力的な父親の血を自分も受け継いでいるのではないか、そしてそれがいつか爆発してしまうのではないか」と悩む昭和63年の高校生を演じ、第37回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。「そこのみにて光輝く」では、監督と話し合い、歯を黄色くし、金髪と黒い部分がプリンのようになったヘアスタイルで熱演。また、「ディストラクション・ベイビーズ」では、柳楽優弥さん演じる謎の青年の圧倒的な暴力性に触れて、自らも変わってしまう高校生役を演じました。

 映画の菅田さんは、ある意味、「暴力とは何か」の問いとともにあるような役をどんどん演じていきました。一方で、CMがきっかけで、お茶の間にも人気が浸透していきました。もちろん、auの「鬼ちゃん」が、最も知名度を上げた作品になったと思いますが、私にとっては、菅田さんの出ていないauの別バージョンのCMも印象的でした。斉藤由貴さん演じるお母さんが、電車の中にあった「三太郎」のポスターを見ていると、息子から「金太郎好きなの?」と聞かれ、「鬼ちゃん」と答えるシーンがあり、出ていないところで話題に上るからこそ、「鬼ちゃん」は、こうした母親世代からも認知される存在になったのだなと意識させられました。

 普通、お茶の間にも人気が浸透するときは、人気のテレビドラマで誰もが知る役を演じることが必須条件のようなところがあります。しかし、菅田さんの場合は、テレビドラマより、むしろCMの「鬼ちゃん」がその役割を果たしています。

 今まで、若手俳優というのは、お茶の間に親しまれる道を行くか、それとも作家性のある映画で暴力やタブー、社会問題などとも向き合った役を演じて演技派の道を歩むか、二択が強いられていたと思います。

 後者を選ぶと、女性やお茶の間のファンの期待に応えるような役は控えたり、また女性向けのグラビア誌には出なかったりすることもありますが、菅田さんは、いまだにデビューのきっかけとなった雑誌「JUNON」の誌面にも登場しています。2017年5月号でも、同世代の俳優たちと共演した映画「帝一の國」の特集が10ページにわたって展開されていました。