高橋さんが醸し出す独特の奥行き感

 そんな中、高橋さん本人が転機だと語っているのは、日本テレビで2013年に放送されたドラマ『Woman』です。前出の『A-Studio』で高橋さんは、演じてきた役について次のように語りました。

 「引きこもりとか暗いとかネガティブな役の傾向が強かったけど、(『Woman』で)初めて“陽”のほうに行けた。こういう役をやらせてもらえるんだということがあって、それ以前それ以降で分けてます」

 この『Woman』の頃から、高橋さんに注目する人が徐々に増えてきたのではないでしょうか。ちなみに、『Woman』の脚本は、『カルテット』や『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』の脚本家でもある坂元裕二さんが担当しています。

 現在では、暗いだけではない役も多くなりましたが、それでも、どんな役を演じても、ほかの俳優とはどこか違う独特な存在感があるような気がします。

 それは何だろうと考えると、どんな役をしていても、「この人はどんな人生を送ったんだろう」などと背景を思わず想像したくなるような、人物像の奥行きを感じさせるところでしょうか。もちろん、すべての役がそうでないといけないわけでもなく、背景を感じさせないあっけらかんとした役も作品によっては重要です。

 でも、高橋さんの場合、そんな背景をこちらに考えさせる奥行き感が人気の秘密ではないかと思います。そしてそれは、どこか悲しそうだったり、うつむき加減だったり、何を考えているのか分からなかったりする目の表情によるところは大きいと思います。