妊活中のストレスケア、1日1回は自分を褒める機会を

黒住 働く女性にとっては、ストレスをどうコントロールするのかも課題です。矢沢さんは、不妊治療中はどのようにストレスケアをされていましたか?

矢沢 私の場合は、治療のことや、毎日の思いを書いた日記をつけていました。でも、実はこの日記が、続けていくうちに「やらなければいけないこと」に変わってしまって……。やりたくてやっていたはずのことが、いつの間にか「義務」に変わってしまい、日記を書かないと寝られなくなったり、日記を書くことで逆に落ち込んだりするようになったんです。

黒住 そういうことって、ありますよね。

矢沢 はい。だからある時、思い切って日記を書くのをやめて、妊娠にまつわる本も、全部処分したんです。「妊娠にまつわることを考えるのは、子どもを授かってからにしよう」「とにかく今は、主人と二人で笑って毎日を過ごしたいな」と思って、自分を縛りつけるものをすべて処分しました。

黒住 それは思い切りましたね。

矢沢 はい(笑)。でも、そうやって1日の治療を振り返ることをやめたら、自分を責めることも、マイナス思考になることもなくなって、心がラクになりました。よく眠れるようになって、「よし、今日も頑張ったな」と、自分を褒めてあげられるようになったんです。良かれと思ってしていることが、いつの間にかストレスの原因になっていることもあるので、そうしたことも含めて、自分の心をしっかりとケアすることが大切なんだなと思いました。

和やかな雰囲気でパネルディスカッションが行われました
和やかな雰囲気でパネルディスカッションが行われました

善方 そうですね。矢沢さんの話を聞いて、自分の「今」の生活の中で、よかったと思えることをかみしめて生きることが大切なんだなと思いました。実際、不妊治療をやめた途端に妊娠される方もいらっしゃるので、自ら望んで治療をしていても、知らず知らずのうちに、ストレスを抱え込んでいることはあると思います。そんなときは、ぜひ矢沢さんのように、自分を褒めてあげられることを見つけてほしいですね。

黒住 では最後に、妊活中の女性に向けてメッセージをお願いします。

矢沢 私もそうだったんですが、皆さん妊活中は、とても頑張ってしまうと思います。でも、一生懸命になりすぎて、疲れて、自分やパートナーを責めることがないように、夫婦で寄り添いながら、楽しい毎日を送ってほしいと思っています。これは私の実感なんですが、相手に優しくすると、相手も自分に対して優しく接してくれます。だからお互いに「ありがとう」という感謝の気持ちを伝え合いながら、大好きな人の赤ちゃんを授かれる日を楽しみに、充実した毎日を過ごしてほしいと思っています。

善方 ここまでは、医師として裏付けのある情報をお届けしなければ……と思ってお話ししてきましたが、最後のメッセージは、同じ一人の女性としてお伝えできればと思います。赤ちゃんは、きっと楽しそうに暮らしている家族のところに行こうとするはずなので、「いつか来てくれるよね」という気持ちで、幸せな毎日を過ごしてほしいと思っています。「どこかに私たちを見守ってくれている赤ちゃんがいて、いつかその子が自分のところに来てくれる」ということを信じて、楽しく充実した毎日を送ってくださいね。

 矢沢さんと善方さんから心のこもったメッセージが届けられ、パネルディスカッションは終了。会場からは大きな拍手が巻き起こりました。