2017年5月20日(土)・21日(日)に東京ミッドタウン(東京・港区)で行われた、働く女性を応援するイベント「WOMAN EXPO TOKYO 2017」。21日には「社会で輝く女性とは~女性リーダーという生き方~」と題して、大手化粧品会社ポーラで活躍する現役の女性リーダーによる講演が開催されました。

株式会社ポーラ取締役 及川美紀さん
株式会社ポーラ取締役 及川美紀さん
ポーラ エステインあすみが丘店 ショップオーナー 山岸彩さん
ポーラ エステインあすみが丘店 ショップオーナー 山岸彩さん

 講演の前半では、株式会社ポーラ取締役の及川美紀さんが自身の経験をもとに、女性が自分らしく輝き、活躍する人材になる秘訣を語ってくれました。進行役の日経BP社執行役員で、日経ウーマン元編集長の麓幸子との掛け合いも息がピッタリ。働く女性が心をつかまれるような名言が続出しました。講演の後半には、ポーラで複数のショップをまとめるリーダー、山岸彩さんも登場。リーダーになるまでの経緯や仕事のやりがいなどを語ってくれました。

「この国は、女性にとって発展途上国だ」というメッセージ

 講演はポーラのCM動画の上映からスタート。「この国は、女性にとって発展途上国だ」というメッセージから始まる動画は、「自分という旗を立てよう」で締めくくられます。このCMを作った意図について、及川さんは「世の中の女性たちに、もっと可能性があるんだというメッセージを送りたかった」と話します。

 そんな及川さんは1991年、訪問販売の会社だったポーラに入社しました。入社直後に埼玉の事業所に出向となり、ライトバンに商品を積んで現場周りをする仕事に明け暮れます。想定していた事務とは違いましたが、周りにロールモデルとなる女性がたくさんいて、仕事がとても楽しかったそうです。

 「当時のショップオーナー(営業所長)は、子育てをしながら自分の店を切り盛りし、女性たちをマネジメントしている方。働く女性として憧れるに足る存在でした。当時の私は、退職までずっとここで働こうと思いました」(及川さん)

転機は昇進試験に落ちたこと

 ところが、30代半ばで課長への昇進試験を受けたところ、予想に反して落ちてしまいます。これが転機として大きかったと、及川さんは振り返ります。

 「現場では課長の肩書がなくても既にリーダーとして仕事をしていました。それなのに試験では『意識が低すぎる』と、こっぴどく批評されました。『もう二度と試験なんて受けない。私はこんなに頑張っているのに。会社は分かってくれない』と、グレてしまいました。その頃の私は、『腐ったミカン』でした」[注](及川さん)

[編集部注]1980 年放送の学園ドラマ「3年B組金八先生2」で、クラスの不良生徒を箱の中の腐ったミカンに例えた言葉。武田鉄矢演じる金八先生がそれを否定した感動のエピソードは有名。


 グレていた及川さんは、当時の上司に対して、「ミーティングに行かなきゃだめですか? 私はちゃんとやってますから、話しても変わりませんよ」などと、つっかかることも! それでも、その男性上司は「君は本当はいい子なんだよ。やりたいことがあるはずだ。また試験を受けなよ」と言い続けてくれたそうです。まさに「金八先生」のような人ですね。また、当時のショップオーナーからは厳しい一言が。「あなた、どこまで落ちていくの? 腐っていくあなたをこれ以上見ていられない」。でも、叱られたことで及川さんの働くことへの意識が変わります。

 「そこまで自分を見てくれて、期待してくれる人がいるのかと思った途端、小さい事業所の『お山の大将』だった私の目線がふっと上がりました。『井の中の蛙大海を知らず、されど空の深さを知る』ということわざの通りです。自分のために仕事をしていた私が、期待に応えて恩返しをするために仕事をしようと意識を変えたんです。ああ、まだまだやれることがあると」(及川さん)

 その後、「お給料を上げたい」という理由ではなく、「もっと多くの仕事をして役に立ちたい」という意識で、課長試験に再度挑戦。論文と面接、アセスメントからなる試験に、見事合格しました。