お金の価値観は、どんな人生を歩んできたかで大きく変わります。最近の若い人は倹約やシンプルライフに憧れを持ちますが、一方でバブル世代と呼ばれるアラフィフの女性たちは、まだまだ消費欲が強いものです。とはいえ、自分の身の丈に合わない生活を続けるのは危険! 今回は自分の生活状態を省みず、バブルを引きずる女性が登場します。お金のプロ・FPの高山一恵さんは、どんなアドバイスをするのでしょうか?

貯金額は0円の寛子さん…OKバブリー!? イラスト/北村みなみ
貯金額は0円の寛子さん…OKバブリー!? イラスト/北村みなみ
大和田寛子さん(仮名) 53歳 大手企業の一般職
年収600万円 実家暮らし
長所 楽天的
短所 バブリー

「私がお金を使わないと、経済は停滞するの」

 日本人は貯蓄や節約が大好きな人が多いですが、例外的にお金を使うのが大好きな世代があります。

 そう、バブル世代です。

 バブル世代とは日本がバブル景気の時に就職した世代のこと。当時日本経済が右肩上がりのピークになり、日経平均株価は3万8000円を超え、史上最高値を更新しました。空前の好景気を謳歌したのは、現在ちょうど50歳前後の人に当たります。

 そんな背景もあり、もちろん全員がそうというわけではありませんが、バブル世代は他の世代と違って消費に抵抗感が少ないのが特徴です。

 さて、今回相談に来た寛子さんですが、ザ・バブル世代の女性でした。というより、現在進行形でバブリーに生きているようでした。

 持ち物は服やバッグ、靴、スマホケースに至るまで、すべてルイ・ヴィトンやシャネルなどのハイブランドで固めたラグジュアリー感漂う寛子さんは、大手企業に勤める一般職でした。40代までは年収700万円で、何不自由のない独身実家暮らしでしたから、毎月好きなだけブランド品を買い尽くすような暮らしを続けていたそうです。

 「どうしてそんなに物を買うのですか?」と聞くと、「私がお金を使うことで経済を回すの。お金を使わないと経済は停滞するのよ。最近の若い子は本当に元気がないわよね!」と寛子さん。筋金入りのバブル世代です。

 ところが、50歳以降、多くの大手企業は急に給料が下がるのが一般的。寛子さんも例に漏れず、年収は700万円から、600万円にダウンしてしまいました。

 それでも今まで通りの消費をしていたのですが、使える額が今までより減っているわけですから、やはり生活が少し苦しくなってきました。定年して引退した先輩たちは悠々自適に過ごしていますが、自分たちの世代は退職金も少しずつ減っており、同じように暮らせるのか不安になった寛子さん。そして、ある日はたと「このままでいいのかしら?」と私のところに来たようです。

 さて、その不安は……的中です。

想像以上のバブリーな生活で、貯金額は0円

 相談に来たものの、「またバブルが来るんじゃないかと思ってるんですよね~。このままでも、まあ、大丈夫ですよね?」と寛子さんはとても楽天的。聞いてみると貯金額は……なんとほぼ0円!

 持ち物もバブリーですが、生活もバブリー。なにもかもステータス重視で、「カードはアメックスゴールドを持つ」「食品を買うならデパ地下」「ランチにお弁当を作って持っていくなんてありえない」「マイボトルなんて貧乏くさ過ぎる」とバブリーな発言を連発。

 それでも月収を毎月すべて使うというのは、どんな行動を取っているからでしょうか。寛子さんの「ワンランク上の生活」を列挙してみましょう。

・ワインが大好き。ワインセラーも持っている。
・なじみのバーに週3回通っている。
・新幹線はグリーン車を選ぶ。
・映画館では必ずプレミアシートをチョイス。
・長期旅行は絶対海外へ!

 まさにバブル! 寛子さんの周りだけ時が止まっているのかも……?とも思えるような行動パターンです。

 一つ一つは「ワンランク高いもの」なのですが、こうして高いものをどんな場面でも選ぶことが問題。生活水準を落とせないこと=バブリーなのかもしれません。

 この価値観は、実家暮らしというところからも来ているようでした。

 実家は都内の高級住宅街にあり、親が建てた一戸建て。両親も健在です。しかし、父親は90代、母親は80代で、これからも頼りきりというわけにはいかない状況です。

 独身ですが、「今は彼氏をつくる気ないんですよ~」とのこと。昔は非常にモテたそうなのですが、本人的にもそれが続いていると認識していました。そこはなんとも言えませんが、寛子さんは全体的に現状把握ができていなかったのです。

 まずは彼女のこれからのお金の現実を見える化し、きちんと伝えることにしました。