ゆとり世代の社会学者・福島創太さんは、ゆとり世代に転職が増えている要因の一つとして、キャリアに対する不安がある、と指摘します。一体、ゆとり世代はどんな不安を抱えているのでしょうか。アラサー世代とも重なるゆとり世代(※1)のキャリア観について考察した「ゆとり世代はなぜ転職を繰り返すのか? ―キャリア思考と自己責任の罠」の著者であり、自身も29歳のゆとり世代である福島創太さんと、ゆとり世代を転職に駆り立てる不安の正体について考えます。
変わらない日常が続くことへの不安
ゆとり世代の社会学者・福島創太さんによると、ゆとり世代の転職は幾つかのタイプに分けられるといいます。中でも、特徴的なのが2タイプ。一つは、これといって「やりたいこと」があるわけでもなく、また明確なキャリアビジョンもなく、仕事にそれほど重きを置いていないように見えて、柔軟に転職を重ねていく人たち。
確固たる希望を実現するために転職をするのではなく、そのときに不満に思っていることから逃れるため、あるいはそのときの瞬間的な希望のために転職をする層を、福島さんは「ここではないどこかへ系」と命名しています。
「ここではないどこかへ系」の特徴
仕事内容がつまらない、上司が嫌い、なんとなく毎日がマンネリ化している、などの不満を抱え、「このままの状態がずっと続いていくと思うと不安」といった理由で転職活動に踏み出すのが、「ここではないどこかへ系」です。
「『ここではないどこかへ系』は、『転職したい』と思ってから実行に移すまでの期間が長く、なかなか行動に移さない、というのが特徴です。というのも、この層は、趣味や交友関係、家庭などを重視していて、キャリアや仕事の重要度がそれほど高くないことが多いんです。
『転職したい』と言っていたとしても『職場も同僚も変わらないけど、彼氏ができたから、転職はもう少し後でいいかな』など、解消したい不安が、仕事だけではなく、プライベートも含めたトータルでの満足度の高低に関わっていることが少なくありません」
しかし、いざ転職活動を始めると、案外スムーズに転職できてしまうのが今の転職市場。
「スマホを見ても、電車内の広告を見ても、ちまたに転職情報はあふれています。勇気を出して転職エージェントに行くと熱心に相談に乗ってもらえ、高望みしなければ転職先も見つかります。良くも悪くも転職はライトになっています。一度転職すると、ころころと何度も転職をくり返す人もいます」