3月8日は国際女性デー。苦難を乗り越え、権利を勝ち取ってきた女性をたたえる日として、1975年に国連で定められた記念日です。日経ウーマンオンラインでは、特集「女性に生まれて、よかった?」と題して、各分野で輝く女性たちにインタビュー。第4弾は、25年も続いている「週刊文春」の連載「阿川佐和子のこの人に会いたい」や、トーク番組「サワコの朝」(TBS系)で多種多様な方に話を聞いて貴重な言葉を引き出す「聞く力」の達人、そして昨年には結婚もされた阿川佐和子さん。アラサー女性の分析に長けている稲田豊史さんが、阿川さんに気になることを次々に質問。笑いがたくさん詰まった本音のメッセージをいただきました。(この記事は後編)


阿川佐和子
エッセイスト、作家。1953年生まれ。慶應義塾大学文学部西洋史学科を卒業後、織物職人を目指してさまざまなアルバイトを経験。その後、報道番組でのキャスターを務め、「ビートたけしのTVタックル」の進行役に抜てき。軽快な進行と鋭いツッコミで人気を集める。「サワコの朝」(TBS系)などのトーク番組や討論バラエティー番組のほか、映画やドラマなどでも活躍。著書の「聞く力」(文春新書)は170万部のベストセラー。近著は、脚本家の大石静との共著「オンナの奥義」(文藝春秋)。

稲田さん(以下、――)阿川さんは2017年5月にご結婚されましたが、ズバリ生涯のパートナーはどういう決め手で選べばよいのか、アドバイスをいただけますか。

阿川さん(以下、敬称略) それは私自身ずっと問い続けてきたし、いろんな人に聞かれましたけど、分かんないんですよ。だって最初から趣味や考え方がぴったんこ合うなんて、あり得ないですから。

 逆にいろいろな点で二人の趣味がズレていても、相手にそれより好きなところがあれば、だんだん嗜好が近づいてくる。相手が履いている靴を見て、「私、こういう靴の趣味ないなあ」って最初は思っていても、その人が好きだったら徐々に「悪くないかも」に変わってくるでしょ。でも、そんなふうに「あばた」が「えくぼ」に見えてくる根拠なんて、理屈で分かるようなことじゃないですからね。

――出会ってすぐ見極められるものではない?

阿川 逆に、最初は特に思わなかったけど、時間がたつにつれて「どうしてもここが嫌だ」となることもありますし。昔、アメリカに在住の日本人の友人が教えてくれた「ニューヨーク・タイムズ」の記事が、今でも忘れられないんです。高齢になってから離婚したある夫婦の妻側の言い分が、「夫が皿の目玉焼きの黄身を口でじかにすすり上げるのが、気になってしょうがない。もうこれ以上は我慢できない」って。

 私、この話を自分のお見合いが続いていた時期に聞いちゃったんですよ。いずれ離婚するほど我慢できないものに膨らんでいく毎日の習慣を、どうやってお見合いの段階で見極めればいいんだ……と(笑)。

――でも、何かしら「この人かもしれない」の当たりをつけるヒントはないものでしょうか。

阿川 あるとすれば、「なんとなく、この人と一緒にいてもつらくない」「激しく面白いかどうか分からないけど、心が和む」「この人といると自分の嫌な性格が弱まる」とか。私の夫で言うなら、私には嫌な性格がいっぱいあるんですけど、それを「まあいいんじゃない」って分かってくれている人だってこと。

 以前、クリントン元大統領の印象的な言葉があって。アメリカにもいじめがあるという話の中で、彼はこう言ったんです。「いじめられている不幸な子どもにとって、周囲の全員が彼の理解者である必要はない。何があっても彼を理解する大人が地球上に一人だけいれば、それで十分だ」って。結婚相手もそれと同じ。「最後の最後に残るのはこの人。この人だけは私のことを嫌いにならない」。そういう安心感が、生きていく上での支えになるんだなと思いました。

「この人は私のことを嫌いにならない」その安心感が決め手でした 写真/毎日放送
「この人は私のことを嫌いにならない」その安心感が決め手でした 写真/毎日放送