「#MeToo」という運動が各国で注目を集め続けています。それは、セクハラを受けたことがある女性が、声を上げにくいその事実について「me too」と証言することで、まん延するハラスメント問題を顕在化させるというもの。日本においても、多くの人たちが声を上げ始めています。この記事では、ハラスメントが生じる要因などについて、ハーバード大学ウェザーヘッド国際関係センター日米プログラム研究員として市民運動の国際比較研究を行う鎌田華乃子さんに教えていただきます。

数多くのハラスメントが「なかったこと」にされてしまう理由

 日経ウーマンオンラインでは、職場で受けたハラスメントに関する読者アンケートを実施しました。すると、1カ月あまりで900名以上もの方々から自身の体験を語る声が寄せられたのです。

 そこには、セクハラについてはもちろん、モラハラやマタハラなどあらゆるハラスメントについて、さまざまなケースが書きつづられていました。

読者アンケート記事 【怒りのエピソード続々 読者のハラスメント体験談】
◆酔った上司から体の関係を迫られ、路上で無理やりキスをされた。
◆上司から、ライン交換を求められたり自宅に招待されたりする。
◆制服のサイズや体型を同僚たちの前で発表され、笑われた。
◆上司から「適齢期になって一度も結婚をしたことがないのは一種の障害」と言われた。
◆独身で子どもがいないことを理由に、大量の仕事を当然のこととして任される。
◆上司から「会社の戦力になるまでは妊娠するな」と言われた。
◆育児休暇を取る時、同僚から「周りに迷惑を掛けるから、私なら退職する」「こちらから辞めろとは言えない」など、暗に退職を勧められた。
◆自分よりも学歴が上だという理由で、職場の先輩たちから嫌がらせを受けた。

多くのハラスメントが「なかったこと」にされています  画像はイメージ(C) PIXTA

 しかし、このようなハラスメントを受けながらも、改善に向けた行動を起こせたという人は決して多くありません。大半の人が、不快な思いを抱えながらもそのまま耐えてきたのです。

 それではなぜ、私たちはハラスメントを我慢してしまうのでしょうか。

 鎌田さんは、原因の一つに「『これは仕方がないことだから受け入れなければならない』と思ってしまう状況がある」と言います。

 「たとえ嫌なことを言われたり、理不尽な思いをしたりしても『そうあるべきなんだ』『自分が従わなければ』と思ってしまう。知らず知らずのうち、凝り固まった先入観に自分を押し込んで我慢してしまうケースがほとんどです」

 実際に鎌田さんも、新卒で入社した企業で上司から性暴力を受けたものの、心に秘めて耐え続けていたという経緯があります。

 「恥ずかしいことだと思い、長年、身近な人にも相談することができませんでした。後日その上司に『私は同意していなかった』と告げたのですが、『受け入れたあなたが悪い』と言われました。そのこともあって自分を責め、『私は同意していたんだ』と記憶を塗り替えたんです。

 たとえ被害を訴えて声を上げたところで、社内での信頼が厚い上司が守られ、新入りの私がクビになることは目に見えていましたから、そのことを恐れる気持ちもありました。そして『逃げなかった自分が悪いんだ』と自責の思いを強く持ち、『受け入れなければいけないことなんだ』と自分に思い込ませ、我慢していたんです」