経営危機にあった中高一貫校「品川女子学院」を7年間かけて改革、入学希望者を60倍に伸ばすなど同校を都内有数の人気校に変えた校長の漆紫穂子さん。つらいこと、楽しいこと、働き女子の本音が詰まった著書を出版したばかりの漆さんに、働く女性へのメッセージを聞きました。前編では、女性のターニングポイントになる年齢についてなどお話を伺いました。

漆紫穂子(うるし・しほこ)さん

品川女子学院理事長・校長。早稲田大学国語国文学専攻科修了。都内私立中高の国語科教員を経て、28歳のとき、実家が1925年に創立した中高一貫校・品川女子学院に転職。経営危機に陥っていた同校の改革に参画し、偏差値を20ポイント以上アップさせた。2017年から現職。「女の子が幸せになる子育て」(かんき出版)など著書多数。趣味はトライアスロン。世界選手権2012年スペイン大会・2017年カナダ大会 エイジグループ日本代表。IRONMAN Copenhagen 完走。

恥ずかしい失敗談も「シェアしたい気持ち」で書いた

――働くことは楽しいですが、時にはつらいことや失敗することもあります。著書「働き女子が輝くために28歳までに身につけたいこと」(かんき出版)では、そのあたりのネガティブな現実についても盛り込まれているのが印象的でした。

「自分の経験を次世代にシェアしたい思いが今、強くなっています」
「自分の経験を次世代にシェアしたい思いが今、強くなっています」

漆さん(以下、敬称略) 現実の社会で働いていたら、足を引っ張られることもあれば、失敗して嫌な思いをすることもあります。「勇気を持ってポジティブにいる」のが理想ですが、いつもそういうわけにはいかないですよね。

 当時副校長をしていた母が48歳でがんを患ったのをきっかけに、私は28歳で実家が経営する学校である品川女子学院に転職しました。母は53歳で亡くなりました。母の闘病生活と学校改革が重なり、今振り返るとたいへんな日々でした。その後も挑戦の連続で、恥ずかしい失敗談やつらかった苦労話などはたくさんありますが、これまではあまり口にしてきませんでした。今、私も50代になり、ネガティブなことも含めて包み隠さず、自分の経験したことを次世代とシェアしたいと思う気持ちが強くなりました。

「想定外の事態に遭遇しても、折れないココロを作ってほしい」
「想定外の事態に遭遇しても、折れないココロを作ってほしい」

――ロールモデル的に輝いている先輩女性の失敗談や苦労話を聞くと、「あんなに活躍している人でも悩んだ時期があったんだ」と勇気づけられる気がします。

 働いていると「想定外のこと」は起きます。「想定外のことが起きること」を想定しておくだけでも、何かあったときにポキッと心が折れてしまうのを防げると思います。自分がひたすら働いてきて経験したことをみんなに渡したい気持ちで本を書きました。「28歳までに」とタイトルに入れましたが、20、30、40代の自分より年下のすべての女性に向けてのメッセージです。