――脚本の助言をされたそうですが、どういったアイデアを出されたのでしょうか?

 「世界の女性参政権についての一覧(どの国で何年に認められたか)を映画の最後に表示することは、私のアイデアです。英国以外の国、違う時代にリンクさせることによって、普遍的に観客に見てもらいたかったからです」

――エメリンさんの活動の時代から男女平等は目覚ましく改善されてきている一方、日本の2016年の男女平等ランキングの順位は、調査対象144カ国のうち111位(世界経済フォーラム<WEF>の2016年版「ジェンダー・ギャップ指数」)と、過去最低の水準でした。これについて、どのように思われますか?

 「日本にとって、この低いランキングは悲しいことではないでしょうか。男女平等のランキングが低いということは、女性は人口の半分なのに、活躍することを奨励されていないことになりますよね。男女が平等でないと、国会や政府においての正当性が半分(男性の分)しかないことになってしまう。日本の方々は、このことについて真剣に受け止め、改善することを考えた方がいいのではないでしょうか。

 改善するためにできることの一つとして、市民、そしてメディアが『これではいけないんだ』と自覚し、いろいろな方法を考えながら訴えかけ続けることが大切だと思います。政府側に主導権があると思いますが、もっと全面的な戦略が必要ですよね。クォータ制(議員・閣僚などの一定数を女性に割り当てる制度)の導入を考えるべきだと思います。世界でも、導入したところでは効果的であることは証明されています」

――世界全体を見ると、まだまだ女性のリーダーは男性と比べて少ないですが、英国ではテリーザ・メイ首相、台湾ではツァイ・インウェン総統、日本では国のトップにはまだ女性リーダーはいませんが、東京に小池百合子都知事が就任しました。一方、米国ではヒラリー・クリントンさんが初の女性大統領に選ばれず、韓国ではパク・クネ大統領に問題が起き、辞任の意向を表明するなど残念なことがありました。女性リーダーに関するこれらのことについて、ヘレンさんはどのように思われますか?

 「私は今の状況を非常に興味を持って見ています。確かに女性リーダーは、過去に比べて増えてはいます。その理由の一つは、私たちがそれを当然のこととして期待しているからだと思います。ところがメディアは、そういった女性リーダーが登場すると、割とすぐに批判的になりますよね。持ちあげて、すぐにこき下ろすという具合です。

 例えばメイ首相の場合、ほかのリーダーがいなくなり、その状況を救うために登場したので、最初はみんな歓声を上げて迎えたのに、すぐに攻撃に転じました。残念ながら、そういった攻撃によって失墜する女性リーダーもいますよね。

 女性リーダーがたくさん誕生することは、とても良いことです。でも、ダブルスタンダードの危険が付きまとうことを認識しなければなりません。また、せっかく誕生した女性リーダーをシンボリックな存在としてとらえ、『一人誕生したんだから、もういいじゃない』という風になることも怖いことだと思います」