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不倫って本当にダメなこと? 夫婦が幸せに暮らせる社会のための不倫リテラシー

2015年9月17日

『はじめての不倫学』著者・坂爪真吾さん×『恋愛氷河期』著者・勝部元気さん対談

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坂爪真吾さん、勝部元気さん

 「あなたの周りに不倫している人はいる?」と問われて、YESと答えた人は75%(ウートピ世論)。その友人が既婚者なのか独身者なのか、相手が既婚者なのか独身者なのかが定かではなく詳細な実態を明らかにする内容ではないものの、ウートピ読者にとって不倫が身近なものであることは間違いなさそうです(おそらくこのなかには「実は私自身がしている」人も相当数含まれているでしょう)。コメント欄ではその是非について議論が起きていますが、「非」のほうが声が大きい印象を受けます。

 不倫が議論されるとき、必ず起きる肯定派と否定派のすれ違い。この状態に一石を投じるふたりの論客が登場しました。しかも、どちらもアラサー男性! 『はじめての不倫学 「社会問題」として考える』(光文社)を著した坂爪真吾さんと、女性の立場に寄り添った恋愛論を『恋愛氷河期』(扶桑社)にまとめた勝部元気さんが〈不倫〉について徹底討論します。

●矢口の不倫は叩かれても、男性タレントはそれほど批判されない

坂爪真吾さん

――不倫肯定派と否定派がはっきり分かれる現状について、おふたりはどう思われますか? 勝部さんのコラム「不倫している女はたいてい程度が低い」も大炎上しましたね。

勝部元気さん(以下、勝):そのコラムは独身女性にとっての不倫の恋を『竜宮城シンドローム』と名付け、女性に向けて、『既婚者との不倫にハマっている独身女性の友人がいたら遠慮なく注意して!』と促す内容でした。なので、男性たちから激しく批判されるとは思ってもみなかったです。なかには女性もいましたが、「不倫の経験もないのに」「それどころか結婚もしていないのに」という批判が多かったところを見ると、不倫経験者が大半なのでしょう。

坂爪真吾さん(以下、坂):私はかねてから、不倫を公の場で議論したほうがいいと考えていたので、こうして1冊の本にまとめたのですが、頭ごなしに否定する〈不倫アレルギー〉の人にこそ、一度本気で不倫について考えてほしいと思っています。

――その〈不倫アレルギー〉は、なぜ起きるのでしょう? 騒動から2年が経とうとしているのに矢口真里さんはいまだ叩かれています。無関係な他人の不倫にまでこうまで目くじらを立てる人がいるのが不思議です。

坂:何に対しても不寛容な人もいますし、自分でも意識していない過去の体験が大きく影響していることもあると思いますが、何にせよ、他人の性を気にしすぎるのはあまり健全な状態とはいえませんね。〈自分は自分、他人は他人〉でいいはずなのに、自分と同じ性行動をとらない他人を批判するのは、なぜなんでしょうね。これは今後考えていきたい課題です。

勝:不倫を批判する側にも男女差があって、あくまで私の感覚ですが、女性のほうが不倫に対するアレルギーが強いように見えます。男性は当事者意識があまりないのでしょうね。よく「うちの妻は大丈夫」といいますが、自分が不倫の被害者になるなんてことを、自分事として考えたこともない。だから危機感もないし、アレルギーも起きない。一方で、不倫する側に向けられる視線のジェンダー差は明らかです。矢口さんの不倫は叩かれても、男性タレントの不倫はそれほど批判されませんよね。そのうえ、矢口さんを叩く女性までもが「嫉妬だ」「本当はうらやましいんだろ」と叩かれるという、二重構造まであります。

●“不倫”という名のインフルエンザへの予防策は?

――メディアではこうしたゴシップにかぎらず、昨年ヒットしたドラマ『昼顔』のように不倫が直接、間接のテーマとなるものがあふれています。

坂:メデイアが不倫を扱うこと自体は、特に問題を感じません。でも、受ける側が不倫に対して無防備で、予防策や打開策を何も持たないまま、ただ流れてくる不倫を消費するのは危険ですね。

勝:そこに関しては私も同じスタンスです。AVと同じで、受け手にリテラシーがちゃんと備わっていれば、いくらメディアにそれが氾濫していてもトラブルにはつながらないはず。でも社会が不倫リテラシーに無頓着なままなので、影響を受けるも受けないも個人の責任になってしまうのは、問題視されていいと思っています。

――いま坂爪さんの口から〈予防〉という語が出ましたが、『はじめての不倫学』では「不倫というインフルエンザにかからないために、不倫ワクチンを」と呼びかけています。

勝:私も興味深く拝見しました。医療の世界でも第一次予防、第二次予防、第三次予防とあって、段階に応じて適切な処置がなされますが、『はじめての不倫学』では主に中程度、すなわち既婚者で、かつ婚外交渉(既婚者が伴侶以外の人とするセックス)への魅力が避けられない段階にいる人たち向けの予防策が語られていますよね。生活習慣病でいうと、検査には引っかかるけどまだギリギリ病気ではない人。個人的にはそのもっと手前にいる人たちへの予防策に興味があります。

坂:たしかに、そこに至るもっと手前で夫婦関係を見直せば不倫は防げるのでは、という意見も読者の方からいただきました。本書であえてそこに触れなかったのは、〈話し合い原理主義〉では不倫の問題を網羅できないと考えたからです。コミュニケーションを重ねることで問題解決できる夫婦はたしかに一定数います。でも、できない人も確実にいる。じゃあ、そういう人たちは何もできずに不倫のドツボにハマり、家庭を壊して、周りの人を巻き込んで……となるしかないのか。そうならないための方策がいま求められていると考えたがゆえです。

●婚外恋愛で泥沼化するくらいなら婚外セックス

勝部元気さん

――そのワクチンが「条件付き(期間限定・回数限定)で行われる、ポジティブな婚外セックス」となると、それこそ賛否がまっぷたつに分かれそうですね。

坂:ベストなワクチンというのがないため、〈ワーストではない選択肢〉として、夫婦関係・家庭を壊さないセックスを提案しました。女性にとっては納得しかねるものだということも、もちろん承知しています。が、いまいったように不倫がきっかけで夫婦関係が壊れ、離婚へとまっしぐらになるぐらいなら、のめりこまない範囲での婚外セックスは「マシ」といえるのではないでしょうか。ここで女性が許容しなければ男性は苦しさを抱えつづけるし、男性が婚外セックスすれば女性がつらくなるし……。どちらかが我慢するしかないという、煮え切らない話ではあるのですが。

勝:つまり〈不倫〉〈婚外恋愛〉〈婚外セックス〉を分けて考えていて、婚外恋愛で泥沼化するくらいなら婚外セックスを、という提案をなされたわけですね。このワクチンについて議論する以前の問題として、〈そもそも不倫とは何か〉〈どういう状態を自分は不倫と定義するのか〉について自分の考えを表明し、人との考えの違いを明確化する必要があると感じました。たとえば男性が性風俗店を利用するのは不倫にカウントするか否かは、人によって違います。状況によるという人もいれば、何がなんでもダメ! という人もいます。坂爪さんも、不倫に対する語彙のなさは指摘されていましたね。

坂:恋愛ありきなのかセックスありきなのかでも、不倫の捉え方は変わってくるので、もっと細分化されて語られるべきですよね。不倫に対して語彙がないから語れない、語れないから感情論だけで賛否が二分してしまうのでしょう。

 アラサー男性による不倫論、後篇も引き続き「私たちが不倫について語ることばを持たない」ことから起きる問題を掘り下げるとともに、アラサー世代の不倫事情についてもうかがいます。(後編に続く)

プロフィール
坂爪真吾(さかつめ・しんご)
1981年新潟市生まれ。一般社団法人ホワイトハンズ代表理事。東京大学文学部卒。新しい「性の公共」をつくる、という理念の下、重度身体障害者に対する射精介助サービス、性風俗産業の社会化を目指す「セックスワーク・サミット」の開催など、社会的な切り口で、現代の性問題の解決に取り組んでいる。2014年社会貢献者表彰、2015年新潟人間力大賞グランプリ受賞。著書に『セックス・ヘルパーの尋常ならざる情熱』(小学館)、『男子の貞操』(ちくま新書)がある。
勝部元気(かつべ・げんき)
コラムニスト・社会起業家。専門はジェンダー論など。所持資格数66個(2015年6月現在)。働く女性の健康管理を支援するコンサルティング会社(株式会社リプロエージェント)の代表取締役を務めるなど、各種ソーシャルビジネスに携わっている。ブログ『勝部元気のラブフェミ論』は、男性なのに子宮頸がん予防ワクチンを打ったレポートが話題となった。twitterは@KTB_genki。初の著書『恋愛氷河期』(扶桑社)が発売中。1983年東京都生まれ。早稲田大学社会科学部卒。

文/三浦ゆえ

(※「ウートピ」2015年9月11日付の記事を転載)

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