
皮膚科専門医。医学博士。東京ミッドタウン皮膚科形成外科クリニックNoage(ノアージュ)院長。2002年聖マリアンナ医科大学大学院卒業後、日本赤十字医療センター勤務、ニューヨーク ワイル・コーネル医科大学勤務などを経て、現職。エイジングケアの美容医療では第一人者の一人。年間6000人以上の診療を行っている。
スキンケアの進化は日進月歩。新しいコスメも次々に登場しているけれど、「本当に大切なこと」は何なのでしょう。皮膚科医の今泉明子さんに聞きました。
●1 美肌に化粧水は不要でしょうか? 最近、「保湿は大切だけど、化粧水は不要。大切なのは乳液・クリーム。日本人は“化粧水信仰”が強すぎる」と聞きました。化粧水は不要ですか? オイルもいいと聞きますが、クリームやオイルだけでOKですか?
⇒ 化粧水はとても大切です。私は「保水」をいう言葉をよく使いますが、肌のお手入れは、まずたっぷりと水分を与えることが大切です。「しっかりと肌に水分を与え、それからクリームなどの油性のアイテムで“フタ”をする」。この2ステップがスキンケアの基本です。
水分を与えずに、いきなりクリームやオイルを塗ってしまうと、肌への負担が大きく、刺激が強いこともあるので、かぶれる場合があります。
化粧水の量ですが、肌がしっとり柔らかくなるまで、つけてください。「肌が少しひんやりするくらい」を目安にするといいと思います。1回塗って終わり、でなく、2度づけするといいでしょう。1度つけたら、ちょっと何か作業をして、何分か後にまた塗るのです。
ちなみに私は、月に2本の化粧水を使います。クリニックで患者さんに「化粧水の量を2倍にしてみて」とお話することがありますが、それだけで肌の質が変わります。うるおって、肌が明るくなるのです。コットンパックも取り入れていただきたいですね。
●2 UVカット効果のあるファンデーションを使えば、日焼け止めは塗らなくてもいいですか?
⇒ UVカット効果のあるファンデーションを使う場合でも、日焼け止めを塗ることをお勧めします。ファンデーションは、顔全体に均一に塗れるとは限りません。
「あとで美白すればいいや」と考えないでください。日焼け止めを塗るというひと手間を惜しんだ分を、その後のスキンケアで補おうとすると、その労力は100倍以上だと思ってください。
まず、紫外線を防ぐこと。そのために、日焼け止めを徹底すること。これが滑らかできれいな肌づくりの基本です。
●3 SPF値の高い日焼け止めを使えば、長時間もちますか? SPF30の日焼け止めとSPF20のファンデーションを重ねれば、SPF50の効果になりますか?
⇒ SPFの数値は、日焼け止めの効果の度合いを示すものです。具体的には、「紫外線を浴びたときにできる赤い斑点ができるまでの時間を、何倍に延ばせるか」を表しています。たとえば、SPF40だと、何もしなければ20分程度で斑点ができるとすると、それを40倍…20×40=800分(13時間20分)に引き延ばせる、ということです。
ただし、この効果がずっと続くわけではありません。皮膚は汗や皮脂を分泌したりするので、日焼け止めは同じところにとどまっていられなくなります。これは、SPFの数値にかかわらず、同じことです。
ですので、日焼け止めは塗りなおす必要があります。2~3時間ごとに塗りなおしたいものです。日焼け止めのパウダーなどの便利なコスメもありますので、そうしたものを活用して日焼け止めを塗ることを徹底してください。
またちなみに、SPF20の日焼け止めとSPF30のファンデーションを重ねて塗っても、SPF 50になるわけではありません。単純な足し算にはなりませんが、重ねると効果は上がります。外出時にはSPF50の効果の高いものを使って、肌を守ってください。