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「壁にぶち当たったら、逃げるが勝ち」

2014年4月28日

20代に9回転職を繰り返した経験から得た教訓

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 中国少数民族料理の「ナポレオンフィッシュ」など、時代を先取りした個性的な飲食店を経営するイイコの横山貴子さんは、20代に9回も転職を繰り返した。「イメージしていた仕事と違う」「直属の上司と合わない」「自分の居場所がない」……。そんな“わがまま”な理由で簡単に会社を辞め、「困難やストレスから逃げてきた」と言う。

 そんな横山さんは30歳を目前にして、「このままではいけない」と考えるようになった。また転職をしても、これまでと同じようにきっと何かに我慢できなくなり、辞めることになる。自分は人に使われている限り、どんな職場も満足できないのかもしれない――そう考えるようになった横山さんは、独立起業を志す。

 まずは、元手が必要と、3年間で500万円を貯めて、東京・恵比寿に飲食店を開業。以後17年間に作ったお店は、新規オープンとリニューアルオープンを合わせて21店舗。時代の変化に合わせて、立ち止まることなく前に進み続けた。

 横山さんはいま、逃げ続けた20代を振り返って「そのときの体験はすべて現在に生きている」と言う。逃げることは無責任で卑怯なことと思われがちだが、自分の気持ちを偽ってまで我慢することは果たして自分の人生に誠実と言えるのか? 横山さんは「壁にぶつかって立ちすくむくらいなら、さっさと逃げればいい」と断言する。経営する飲食店と同じようにユニークで個性的な仕事論とキャリア論を聞いた。

横山貴子(よこやま・たかこ)
イイコ社長。1963年生まれ。美大を卒業後、ジュエリー関係の会社に就職。その後、20代で9回の転職を繰り返す。33歳の時に500万円の貯金を元手に東京・恵比寿に、看板なし、メニューに価格表示なしの飲食店「201号室」をオープン。隠れ家飲食店の先駆けとして人気を集める。その後も、時代の半歩先を行く数々の話題店を作ってきた。現在は「Club小羊」「月世界」「中村玄」「ナポレオンフィッシュ」「casa nova」の5店舗を運営する。

――「逃げてもいい」というのは、とても思い切ったアドバイスですね。

横山 逃げても、逃げなくても、どちらにもリスクがあると思うんです。「石の上にも三年」といった言葉があるくらい、日本の社会は忍耐や我慢を良いこととして、逃げることを罪悪視しますが、我慢が必ずしもいい結果を生むとは限りません。以前、あるセミナーで、私の逃げ続けてきたキャリアについてお話したところ、講演後に、参加者のひとりが、苦笑いしながらこう言ってくださいました。「今日のお話をもっと前に聞いていたら、さっさと離婚できたのに」。

 いま我慢して踏ん張れば、自分が望む人生を歩めると思えるのであれば、我慢は大切です。でも、そう思えないのに我慢するのは、今という貴重な時間を無駄にしていると思うんです。「ここは自分の求めている場所とは何か違う」という疑問を抱えながら、辛さや生きにくさを我慢しているうちに人生が終わってしまったら……。それはあまりにも巨大なリスクじゃないでしょうか。

――以前から、そうした考えだったのですか。

横山 いいえ、転職を繰り返していた20代は「自分は辛抱が足りないダメ人間なのでは」とたびたび自己嫌悪に陥っていました。でも、起業して自分で自分の人生の手綱を握るようになって分かったことがあるんです。ひたすら逃げ続けた20代ですが、その頃に出会った人たち、その頃にした経験は、今ではすべて財産になっているということです。あんなに嫌いだった上司からも、学ぶべきことはあったんです。

――具体的に言いますと。

横山 実は、最初に作った店からも私は逃げ出しているんです。20代の会社員時代だけでなく、起業後も逃げ癖は直らなくて……。

 私は、33歳のときに恵比寿の雑居ビルの2階に「201号室」というお店を作りました。とても繁盛して、充実感も達成感も得られたんですが、職人気質の料理長と素人から飲食店のビジネスに飛び込んだ私の間で、店の運営に関して意見がぶつかり、どんどん関係が悪化していきました。「きちんと話し合わなければ」と焦り、いろいろと働きかけたんですが、とうとう話しかけても口を利いてくれないような状態になりました。悩みに悩みました。で、最後にたどり着いた結論は、もう無駄な努力はやめよう。お客さまもずいぶんと店に定着してくれたし、私がいなくても何とか店は回りそうだし。それなら私が店を抜ければいい。

――自分が作った店なのですから、料理長に辞めてもらうべきでは?

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