今は、「以前にはできなかったことが、ハードルが下がって多くの人たちができるようになっている」と精神科医の香山リカさんは言います。でも、その先に待っているものは?――。
「女性の自己像のハードルが高くなっている」「一人勝ちか全部負けかの二極化」という時代に、
女性はどうすればいいのかをうかがいました。
(聞き手/生活コラムニスト・ももせいづみ)
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――香山さんは日々、いろいろな人の悩みと向き合っていると思うんですが、女性を取り巻く状況の変化を感じる部分はありますか?

精神科医。立教大学現代心理学部映像身体学科教授。1960年、札幌市生まれ。東京医科大学卒。学生時代より雑誌等に寄稿。その後も臨床経験を生かして、新聞、雑誌で社会批評、文化批評、書評なども手がけ、現代人の“心の病”について洞察を続けている。『しがみつかない生き方―「ふつうの幸せ」を手に入れる10のルール』(幻冬舎新書)、『母親はなぜ生きづらいか』(講談社)など、著書多数。
香山:私自身は気楽に生きてきたし、はっと気が付いてみたら子どももいなくて、たいしたことも成し遂げてないなあ、失敗したなあという気持ちがないわけじゃないです。診察室では人と比べないようにと言ってはいるけれど、自分の中ではどういう人を見ても、ああいう生き方は素敵だなあとか、ああだったら楽しいだろうなあ、なんて思うことも多いですよ。
ただ、診察室では、私からみて幸せであるはずの生き方をしている人が悩んでいたり苦しんでいたりするのを目の当たりにすることが多いですね。10年前から都内の病院に勤務しているということもあると思うけれど、「そのままで十分じゃない? これ以上何が?」と思うような人が、「このままじゃいけない」とか「何か足りない」と言うことが増えたという気がしますね。
じゃあ、その人たちはどうしたいのかというと、具体的に何かがあるわけじゃなくて、メディアのなかに時代のシンボルのような人が出てくると、「その人に比べたら自分はまだまだ」だと思ってしまう。
――シンボル。例えばどういう人たち?
香山:例えば最近だったら宇宙飛行士の山崎さんとか、蓮舫さんとか。こういう人たちはキャリアも学歴も美貌も、もちろん結婚も子どもも、すべてを手に入れているかのように見えるわけです。
それじゃ、あなたは蓮舫さんのようなことがしたいの? と聞くと「いえいえとんでもない、私にはとても無理」って答える。でも今のままではいけない、と思ってる。
子育てが女性だけの問題になっているといった社会的側面も、もちろんあるわけですが、一方では女性の心のなかにある要求水準の高さとか、自分への厳しすぎる視線や過剰なほどの向上心とか、そういうもので自分で自分を苦しめているということはあると思いますね。
――なんでそんな風に要求水準が高くなってしまったんでしょうねぇ。



