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気概ある女性たちの強さを描いた2冊

2014年6月5日

桂望実著『我慢ならない女』/深澤真紀著『日本の女は、100年たっても面白い』

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 突然ですが、他人に言われると、なんとも複雑な気持ちなる言葉があります。そのひとつがこれ。

 「気が強いね」

 意味は「気性が激しく、めったなことではくじけない」(三省堂国語辞典第6版)。悪い意味ではない、どちらかといえば「たくましそう」に感じます。しかし、この言葉をかける側の意味は(わたしの考えるところ)二つのタイプに分かれます。

 まずはストレートに使うタイプ。「この人は気が強いんだ」と屈託なく第三者にわたしを紹介する人に対しては、別になんとも思いません。

 複雑になるのは、こちらのタイプ。前者と同じく第三者にわたしを紹介する場面で、適当な言葉が浮かばず「この人は気が強いから」とごまかす人。同じ「気が強い」という言葉だけど、言う側の微妙なニュアンスによって、複雑な気持ちになるのです。

 ふと考えたのですが「気が強い」という言葉は、女性、あるいは子どもに使われることはあっても、男性に「気が強い」ということはあまりなく、逆に「気が弱い」ならある。これは男性がもともと「気が強い」もので、女性はそうではない、という刷り込みがあるのかもしれません。そんなことを思いながら読んだ2冊の本を紹介します。

桂望実著『我慢ならない女』(光文社)。

 10年間、バイトしながら小説懸賞に応募し、落選を繰り返した末に作家デビューを果たした樺山ひろ江。姪の明子は叔母が一心不乱に執筆する姿に感動を覚え、ひろ江の身の回りの世話をするようになります。

 デビューしたものの、編集者に作品を読んでもらえず、たった一冊出した本も売れ行きは芳しくない。しかし、ある作品がテレビドラマ化された途端、本が徐々に売れるようになり、ひろ江に注目が集まっていきます。

 ひろ江に近づいてくる輩には、明子がよく思わない俳優もいます。あきらかにひろ江の作品の舞台化、映像化と主役を狙っているとわかるのに、ひろ江は彼を受け入れてしまう。ひろ江の作品の売れ行きが落ちていくと、波が引くように人が去っていきました。

 人気に左右され、本の売上げに振り回される不安を抱えながら身を削り、小説を生み出すひろ江。作品のためなら自分の見た目も印象も構わない。しかし巧妙に入り込んでくる男には揺れる女心。

 作家としての業、女の性があますことなく描かれています。自分の経験したもののすべてを小説に還元していくひろ江の姿は、凄みがあります。気弱だった明子もひろ江の姪らしく、自分を裏切った夫に仕返しします。

 ふたりの個性は全く違う。だけど長い時間をかけて手に入れた「強さ」は似ている。ひろ江は気が強いのではなく、不安が彼女を奮い立たせているのだと感じました。

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Profile
中江 有里
中江 有里
1973年大阪生まれ。89年芸能界デビュー。 2002年「納豆ウドン」で第23回BKラジオドラマ脚本懸賞最高賞受賞。 NHK-BS「週刊ブックレビュー」で長年、司会を務めた。 近著に「ホンのひととき 終わらない読書」(毎日新聞社)。 現在、NHK「ひるまえほっと」‘中江有里のブックレビュー’に出演、 関西テレビ「スーパーニュースアンカー」、フジテレビ系「とくダネ!」にコメンテーターとして出演中。新聞や雑誌に読書エッセイを連載中。書評も多く手がける
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