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親との関係を見つめなおす2冊

2014年5月8日

篠田節子著『長女たち』/松田青子著『英子の森』

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 昨年末に甥っ子が生まれました。生後4ヶ月を過ぎ、体重は生まれた時の倍の重さに。ようやく首がすわり、表情も豊かになって可愛さが増してきました。

 赤ん坊は自分ひとりでは何もできない弱い存在ですが、泣いている赤ん坊くらい強いものはありません。大人たちはオロオロと「どうして泣いでるの? こっちが泣きたくなるよ」とひたすら赤ん坊をなだめる弱い立場になるのです。

 かつての自分もこんな風に育てられたのだ、と思うと、親のありがたさを実感します。

 しかし親に対して複雑な感情を抱く人もいるでしょう。たとえば「育ててあげたのだから、恩返ししなさい」と言われたとしたら―。

 親への複雑な思いに悩む方におすすめの本を紹介します。

篠田節子著『長女たち』(新潮社)。

 長女は何かと当てにされる―これは長女であるわたしの実感です。そんな長女たちを主人公とした3編の小説が収められています。

 『家守娘』の主人公直美は、母親と二人暮らし。体の不調を訴える母は、他人からの世話を一切拒否。直美は自身を犠牲にしながら面倒を見ていましたが、母に痴呆の症状が出てきたため、直美は仕事を辞めて本格的な介護生活へと入ります。

 将来の不安を抱えながら、父の残した財産を食いつぶす、逃げ場のない介護生活。介護の経験はなくとも、読むと息苦しくなり、誰にも理解されない直美の孤独が迫ってきます。

 そのほか、父を孤独死させた長女、重い腎臓病の母へ腎臓提供すべきか否かに悩む長女が登場します。親たちがそこそこ健康で生きてくれたら、こんなことにならなかったのだろうか……ふとそんな考えがよぎります。

 人間は弱った時にこそ、本当の姿が浮かび上がるのかもしれません。それぞれの長女たちは自分とは相容れない親を見捨てることができません。でもこのままでは自分の人生がなくなってしまう恐怖を感じているのです。

 親子、特に母と娘は似て非なる存在です。それに親が気づかず、娘を自分の一部(かつては自らのお腹で育んだ存在)として扱い、自分の思うままに生きることを(おそらく無自覚に)強制している。そういう母に育てられた娘も親に忠実に生きるよう刷り込まれている。

 物語の最後、長女たちは親との関係にある決断をくだします。もがき苦しみ悩んだ末に出た答えに長女たちの肩を優しく抱きたくなりました。

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中江 有里
中江 有里
1973年大阪生まれ。89年芸能界デビュー。 2002年「納豆ウドン」で第23回BKラジオドラマ脚本懸賞最高賞受賞。 NHK-BS「週刊ブックレビュー」で長年、司会を務めた。 近著に「ホンのひととき 終わらない読書」(毎日新聞社)。 現在、NHK「ひるまえほっと」‘中江有里のブックレビュー’に出演、 関西テレビ「スーパーニュースアンカー」、フジテレビ系「とくダネ!」にコメンテーターとして出演中。新聞や雑誌に読書エッセイを連載中。書評も多く手がける
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