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「耐久消費財」のイルカを見に行く?(2/2)

2010年8月18日

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それでもイルカショーを見に行きますか?

 また、飼育下のイルカの繁殖はかなり事例が少なく、初期死亡率も高いのです。2009年内にあった11の繁殖事例のうち、流産死産が6例、正常に産まれたのは5頭のみだったということです。さらにこの5頭のうち、2009年末時点まで生き残っていたのは2頭だけでした。

 そんなわけですから、飼育ハンドウイルカの中で、飼育施設内で産まれた個体の数もわずか23頭で、ほかの250頭は野生由来なのですね。報告書では、ハンドウイルカ飼育の課題として「死亡率の改善」「出生個体の初期死亡率の改善」「死産・流産率の改善」「近親交配・交雑の防止」を挙げています。

 こういったことを知ったうえでも、あえて水族館のイルカショーを見たいと思う人はどれだけいるでしょうか。

 ぼくは、水族館が野生のイルカの個体群に負担をかけ続けるのはまずいと思っています。それは、ぼくが主として「自然保護」を重視する立場に立っているからなのですが、それだけでもありません。

「自然を護る」水族館なのに……

 というのも、現在の水族館や動物園は、単なる娯楽施設ではなく、「自然を護る」側に立つものと位置付けらており、自らもそう述べるようになっているからです。すべての動物園や水族館は、環境意識を高めるメッセージを来園者・来館者に向けて発しています。そんな中、イルカは「自然からの大使」です。それなのに、イルカが高い死亡率で、常に野生からの供給を要するなら、どこか矛盾していると思いませんか?

 ぼくは水族館に勤める知人も多いので、彼ら・彼女らが、その矛盾の中で、なんとかイルカを長く、幸せに飼育し、繁殖の成績をあげようと努力しているのを知っています。とはいえ、ここまでして、イルカを飼う必要があるのか、と疑問を抱く飼育員がいるのも事実です。

 結局、今のところ、水族館にイルカがおり、たえず野生から供給され続けているのは、根強い消費者(つまりぼくたち)からの需要があるからなのです。水族館で見るかわいいイルカは、ぼくたちのイルカへの愛着を養います。けれど、それが、野生への負担、ひょっとすると飼われているイルカへの負担ともなっているかもしれないとしたら? とても大きな問題提起です。

追記
今、アメリカの一部の大きな水族館では、人工授精などを使って、野生に負担をかけずに(野生から新たなイルカを連れてこずに)、累代繁殖できる技術が確立されつつあるという情報があります。これは照会中なのですが、まだはっきりとしたデータを手にしていません。連載中にわかりましたら、あらためて報告します。

イルカ問題を考えた著作が文庫化
『イルカと泳ぎ、イルカを食べる』(筑摩書房)

川端裕人著。人間とイルカの関係について考えながら行った、14のイルカをめぐる旅の記録。『イルカとぼくらの微妙な関係』(時事通信社)の文庫版。

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川端 裕人
川端 裕人(かわばた・ひろと)
ノンフィクション作家・小説家。1964年生まれ。日本テレビ記者を経て、1995年にノンフィクション作家としてデビュー。著書に『イルカとぼくらの微妙な関係』(時事通信社)、『クジラを捕って、考えた』(徳間書店)、『ペンギン大好き!』(新潮社)などのノンフィクション作品、『算数宇宙の冒険』(実業之日本社)、『(1)嵐の中の動物園三日月小学校理科部物語』(角川つばさ文庫)などのフィクション作品がある。
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