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「耐久消費財」のイルカを見に行く?

2010年8月18日

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水族館のイルカは“補給”が必要

 わたしたちが、イルカと出会う場所で、一番ポピュラーなのは水族館ですよね。ところが、和歌山県太地町のイルカ追い込み漁を描いて話題になった映画「The Cove」では、水族館でイルカを飼うことも批判の対象になっていました。

 なぜ、って思いません? だって、水族館のイルカたちは、楽しげに見えますし、訪れた人たちを癒してくれます。なのに、飼っちゃけない、なんて……。

 でも、映画を観た人は、少々、複雑な気分になったはず。だって、たくさんの水族館の飼育員が追い込み漁の現場にやってきて、自分たちのところで飼育する若い個体を選んで持ち帰るシーンがあるのです。血で赤く染まった海で、「選別」されるイルカたちの姿はかなりショッキングなものでした。

 それにしても、なぜ、あれだけたくさんの飼育員たちがきて、イルカを水族館に連れて行くのだと思いますか? 映画の中では語られていませんでしたが、実は水族館のイルカは「消耗品」と言われても仕方がないのです。いや、ちょっと言い過ぎで、「耐久消費財」のレベルだとも言えますが。要は、今のところ、水族館のイルカ展示は野生に負担をかけずには維持できません。飼育下で、イルカを殖やすのは難しく、常に野生からの補給が必要なんですね。

「イルカは水族館で繁殖できる」の誤解

 え? そんなことないでしょう。よく、水族館で赤ちゃんイルカが生まれているじゃない!と思う人もいるでしょう。確かに、生まれています。飼育下繁殖に力を入れている新江ノ島水族館では4代目も生まているほど。じゃあ、やっぱり、野生のイルカをわざわざ捕まえる必要はないのでは?

 でも、残念ながら、これにはちょっとトリックというか、誤解を招く部分があるわけです。累代繁殖の定義は、「親のうちのどちらかが飼育下で生まれた個体」ということで、例えば父親が飼育下繁殖個体なら、母親は野生から連れて来られたものでもかまわないのです。そして、飼育下繁殖個体同士のカップルが繁殖に成功するのはとても珍しいことです。ほとんどの場合、どちらか(大抵はメス)が、野生から来たもので、それでも代を重ねることに「飼育下繁殖○代目」として認められるわけです。常に野生からの新しい個体が必要な理由、わかってもらえますか。

 さらに、ぼくの手元ににはもう少し詳しい資料があります。日本動物園水族館協会「種保存委員会報告書」というのですが、それによりますと、日本全国でのハンドウイルカの飼育数は2009年末の時点で273頭いました。それに対して2009年中の年間死亡数は29頭です。飼育下個体群の1割以上が1年で死亡するのは、大型動物ではかなり多いです。例えば、ゾウやゴリラやキリンやサイといった動物園の人気動物が、年に1割も死んでしまったら大騒ぎになりますよ。

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川端 裕人
川端 裕人(かわばた・ひろと)
ノンフィクション作家・小説家。1964年生まれ。日本テレビ記者を経て、1995年にノンフィクション作家としてデビュー。著書に『イルカとぼくらの微妙な関係』(時事通信社)、『クジラを捕って、考えた』(徳間書店)、『ペンギン大好き!』(新潮社)などのノンフィクション作品、『算数宇宙の冒険』(実業之日本社)、『(1)嵐の中の動物園三日月小学校理科部物語』(角川つばさ文庫)などのフィクション作品がある。
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