乾燥するこれからの季節、肌の保湿やウイルス対策に除菌を心掛けていても、体の中の渇きには無頓着――しかし、乾燥は思いもよらない悪影響をもたらすことも。秋冬こそ重視すべき“水分補給”について教えてもらいました!

乾燥がウイルス感染のリスクを高めることに

池袋大谷クリニック
大谷 義夫院長
1963年東京生まれ。1989年群馬大学医学部卒業。東京医科歯科大学呼吸器内科医局長、同大学呼吸器内科兼任睡眠制御学講座准教授、米国ミシガン大学留学等を経て、2009年池袋大谷クリニック開院。医学博士、日本内科学会総合内科専門医、日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医など

 秋冬に風邪やインフルエンザが流行する一因となるのが乾燥だ。「夏に比べて空気が乾燥する冬は湿度が50%以下という日が続き、日によっては20%を切ることも。エアコンなどの暖房器具によって室内もカラカラに乾燥します。インフルエンザや風邪のウイルスは湿度が50%以下になると活発化するので、この時期はウイルス感染の予防対策が必要です」と池袋大谷クリニックの大谷義夫院長は話す。

 例えば、手洗いを徹底したり、加湿器で室内の湿度を50~60%に保ち、ウイルスの活動を抑制したり、ウォーキングなどの適度な運動で免疫力を高めたり――こうしたウイルス感染予防のアクションを習慣づけることが大切だが、とくに重要なのは「水分補給」と大谷院長は指摘する。

 ポイントは、鼻や喉、気管支の粘膜表面にびっしりと生えていて、ウイルスの侵入を防ぐ働きをする「線毛」と乾燥の関係性だ。「本来、インフルエンザや風邪のウイルスが気道に入ると線毛がキャッチし、小刻みに動いてベルトコンベヤーのようにウイルスを体外に排出してくれます。ところが、乾燥すると線毛がダメージを受ける。動きが鈍くなり、侵入してきたウイルスをうまく排出できなくなるのです」(大谷院長)。

(上)鼻から喉、気管支までびっしり生えている線毛が、体内に入ってきたインフルエンザや風邪のウイルスを捕まえ粘液の流れに乗って体外に排出。粘膜へ侵入しないように守ってくれる
(下)気温の低下や乾燥などの影響で線毛の動きが鈍くなると、ウイルスがうまく体外に排出されず、粘膜に侵入しやすくなり、感染リスクが高まる