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専門医が語る「川島なお美さんの逝去から学ぶべきこと」

2015年10月9日

「癌」で考えたい、大切なこと

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 川島なお美さんの逝去から、「癌」について考えておきたい大切なことを、緩和ケアの専門医、廣橋猛(ひろはし たけし)さんに語っていただきました。

 女優の川島なお美さんが9月24日、胆管癌のため逝去されました。胆管癌という、悪性腫瘍の中でも難しい病気と闘っておられたため、非常に心配していたのですが、不安が現実となってしまいました。

 今回、皆さんが驚かれたことは2つあったのではないでしょうか。1つ目は9月8日にご夫妻で記者会見に臨まれた際、非常に痩せたご様子であったこと。2つ目はその記者会見から、わずか16日後に逝去されたことです。

 記者会見では凛と立ってお話をされていましたが、見るからに羸痩(るいそう)が進んでおり、恐らく末期癌の状態なのではないかと感じました。そして、そのわずか16日後の訃報に驚きはしましたが、予想外とは感じませんでした。

 ここに、末期癌患者の経過について学ぶべきことが隠されています。

癌患者は最期に急激に悪化して亡くなる

 一般の方からすると、病は少しずつ悪化していくという印象をお持ちのようです。癌患者が亡くなるとき、ご家族は急に悪くなってしまったとショックをお受けになることがありますが、終末期癌患者を多く見ている医療者からすると、よくある光景です。

 このように、癌患者は最期に急激に悪化して亡くなります。逆の見方をすると、亡くなるギリギリまで、自分のやりたいことができる可能性があります。

 ここに自分がよく患者さんやご家族に説明するグラフ(Lynn J. Serving patients who may die soon and their families. JAMA.2001;285: 925-32.から引用)があります。癌患者は亡くなる1~2か月前まで、ほとんど普通と変わらず活動することができます。しかし、最期は急激に身体機能が低下して動けなくなっていきます。外出・入浴・排泄といった生活動作に、誰かの助け、すなわち介護を要する状態となります。

 それに対し、心不全や呼吸不全などの内臓疾患、認知症・老衰は、ゆっくりと同じような傾きで機能が低下していきます。ここが、癌患者が他の疾患の患者と異なるところです。

 このグラフを患者さんやご家族に説明することで、最期をどこでどう過ごしたいかの準備を、未然に、元気なうちからすることの重要性に気付いてもらっています。まだ自分は元気だから大丈夫、ではなく、急に悪くなってからでは間に合わない恐れがあるので、なるべく早めに備えておきましょう、ということです。

 癌患者は最期の1~2か月に急激に悪化するという事実は、知らないままだと本人や家族に衝撃を与えてしまいますが、知っていると逆に良い面もあることに気付きます。それは亡くなるギリギリまで、普段通り生活できるチャンスがあること、そして介護を受けるのはごく短期間で済む可能性が高いということです。

 この事実を、抗癌剤治療の手が完全になくなってから知るのでは遅い可能性があります。既に最期の1~2カ月に差し掛かっていそうな人もいるからです。

 癌が他臓器に転移していて、抗癌剤治療の選択肢も残り少ないという状況。すなわち、既に完治は望めなく、そう遠くないうちに治療の手がなくなってしまうだろうというときに、たとえいつか亡くなるときが来るとしても、ギリギリまで自分らしく生きるチャンスがあるという事実は、残された時間を過ごす力になるのではないでしょうか。そして、そのときに自分らしく生きるために、必要な準備をするきっかけになるのではないでしょうか。

川島さんが教えてくれたこと

 話を川島なお美さんに戻します。彼女は「抗癌剤の副作用でステージに立てなくなる可能性があるなら、私は最後まで女優として舞台に立ち続けたい」と考え、抗癌剤は使用しなかったそうです。

 そのことに賛否両論あるでしょう。余命が短いことは、少なくともご家族には伝えられていたようですし、ご自身も死を意識していたはずです。ただ、彼女は抗癌剤治療をしないことを選択しました。そして、女優として記者会見に臨まれ、ギリギリまで舞台に立ち続けられました。恐らくは長時間立つことなど不可能であり、それなりの痛みや苦しさを伴っていたものと想像され、そこには適切な緩和ケアが施されていたのではないかと思います。

 川島さんは、多くの癌患者さんに教えてくれました。「癌患者は、最期に急激に悪化するから、早めに準備をしておいた方がよいこと」を。そして「癌患者は、亡くなるギリギリまで、自分らしく生きることができること」を。

(※日経メディカルより転載)

プロフィール
廣橋 猛
永寿総合病院 がん診療支援・緩和ケアセンター長
廣橋 猛(ひろはし たけし)
2005年東海大学医学部卒。三井記念病院内科などで研修後、09年緩和ケア医を志し、亀田総合病院疼痛・緩和ケア科、三井記念病院緩和ケア科に勤務。14年2月から現職。

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