「妊活」という言葉をよく耳にするようになってきた。その一方で、メルクセローノ株式会社が行った調査では、既婚女性の3人に1人が不妊で悩んだ経験があることが分かった。意外に多いこの数字。調査結果から見えてきた、早めのライフプランニングの大切さについて考えてみたい。

3人に1人が不妊に悩む時代。仕事との両立が難しいという現実も

 著名人が妊活や不妊治療の体験をSNSやブログで公開したり、妊活をテーマとしたテレビドラマが放送されたりと、今や妊活という言葉はごく身近なものになっている。しかし、実際に妊活中の女性はどんな意識・状況にいるのだろうか?

 医薬品の製造・販売などを手がけるメルクセローノ株式会社が今年6月、全国の20~40代の男女26,490人を対象に行った「第2回 妊活(R)および不妊治療に関する意識と実態調査」の結果から見てみよう。

 それによれば、「妊活経験あり」の人は既婚女性の4割弱(35.1%)。「不妊で悩んだ経験あり」の人も同じく既婚女性の4割弱(35.7%)だった。実に既婚女性の3人に1人が不妊に悩む経験をしていることになる。一方で、「不妊治療経験あり」の人は既婚女性の7人に1人(15.4%)で、不妊に悩んでも治療を受けなかった人のほうが多い(グラフ1)。

(グラフ1)既婚女性のうち、不妊に悩んだ経験がある人は35.7%だが、不妊治療を経験した人は15.4%にとどまる
(グラフ1)既婚女性のうち、不妊に悩んだ経験がある人は35.7%だが、不妊治療を経験した人は15.4%にとどまる

 理由の一つとして考えられるのが、仕事と不妊治療の両立の難しさだ。厚生労働省が昨年実施した不妊治療と仕事の両立に関する調査によれば、不妊治療と仕事を両立している人のうち、両立が難しいと感じた人の割合は87%と、9割近くにのぼった。

 同じ調査では、企業に対して、不妊治療を行っている従業員に対する支援制度や取り組みについても尋ねているが、「行っている」と回答した企業はわずか9%。今の日本では、不妊治療を支える社会的なサポートが不十分であることがうかがえる(※1)。

※1 出典:厚生労働省「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査研究事業」

 もう一つ、メルクセローノ株式会社が行った実態調査の結果に興味深いデータがある。妊活や不妊に関して女性が「話をしたい相手」のトップは「パートナー」で88%だが、実際に「パートナー」が「話をしやすい相手」であると回答した女性は75%で、13%の開きがあるのだ(グラフ2)。妊活や不妊について、相談したい相手と思うように話すことのできない状況が、不妊の悩みを助長したり、不妊治療へのハードルになったりしている可能性も考えられる。

ライフプランを語り合える社会の実現に向けて

 一方で、生物学的に女性が妊娠できる期間は限られていて、年齢が上がるほど妊娠は難しくなる。特に日本では、不妊治療の患者の平均年齢は40歳前後と、治療が遅れがちであることが分かっていて(※2)、今回の実態調査でも、実際に不妊治療を受けた女性の約7割が「もっと早く受診すればよかった」と回答している。妊娠を含めたライフプランを、早めにパートナーと語り合うことが何より大切なのだ。

 それぞれのライフプランを語り合う機会が社会全体で増えれば、妊娠や不妊について話す心理的なハードルも下がり、職場や地域でのサポート体制の充実も期待できるだろう。そんな社会の実現に向けて、思い切って一歩を踏み出してみたい。

※2 出典:日本産科婦人科学会「生殖医療(ART)データブック 2015年」

(グラフ2)妊活や不妊について「話をしたい相手」のトップは「パートナー」で88%なのに対し、「話をしやすい相手」として「パートナー」と回答した人は75%。思うように話ができていない様子がうかがえる
(グラフ2)妊活や不妊について「話をしたい相手」のトップは「パートナー」で88%なのに対し、「話をしやすい相手」として「パートナー」と回答した人は75%。思うように話ができていない様子がうかがえる