アウトドア、グルメ、スピリチュアル、アニメ……。最近、秩父がアツい。秩父というほどよい田舎に惚れた女が、その見どころと魅力、そして秩父が急にブレイクしたその理由に迫る。

 「最近、秩父がアツいんです」。

 このセリフを今年何度言っただろうか。こう言うと決まって「何がアツいの?」と質問が返ってくる。

 「実はですね……」

 ここから、秩父に惚(ほ)れた女、すなわち筆者の「秩父アツいよ話」が始まるのだ。

特急レッドアロー号の車内に異変!

 秩父市は、埼玉県北西部に位置する県内最大の市だ。その面積は埼玉県の約15%を占め、約80%が森林という自然豊かな土地である。

 埼玉と言えば東京のベッドタウンのイメージが強いが、冬になれば秩父の山岳地域はかなり雪が降る。埼玉県に海はないが、ここ秩父ではラフティングなどの水遊びも楽しめる。しかも都心からそれほど遠いわけでもない。穴場のアウトドアスポットだ。

 じゃあアウトドア派の人しか楽しめないのかというと、そうではない。グルメスポットも数多く、インドア派も楽しめる。繁忙期においては店の前で2時間待ちは当たり前という一面も持っている。

 筆者が初めて秩父を訪れたのは、3年以上前の2012年5月頃。都心の桜は散り始めていたが、秩父は満開のときを迎え、実に見事な桜並木を眺めた記憶がある。そこから筆者は複数回、秩父を訪れている。

 秩父に行くには、西武池袋駅から特急「レッドアロー号」の特急券を購入し、乗車する。終点の西武秩父駅には約80分後に到着する。

西武鉄道の特急「レッドアロー号」。東京都豊島区の西武池袋駅から終点の西武秩父駅まで約80分。車窓から秩父の豊かな自然が楽しめる(写真提供:西武鉄道)
西武鉄道の特急「レッドアロー号」。東京都豊島区の西武池袋駅から終点の西武秩父駅まで約80分。車窓から秩父の豊かな自然が楽しめる(写真提供:西武鉄道)

 平日朝8時台の下り電車ということもあってか、車内には登山客と思われる中年のグループか、スーツを着たサラリーマンをぽつぽつと見かけるだけ。乗車した車両はほぼ、筆者の貸し切り状態だった。

 帰りも似たような感じだったが、行きと違っているのは、中年ハイカーたちが秩父の地酒を呑みながら盛り上がっているところくらい。

 ところが、である。

 春から秋、秋から冬と季節は変わり、2年目の秩父の春、久しぶりに乗ったレッドアロー号は、前とは違っていた。

 大学生とおぼしきイマドキの女子が乗っていたのだ。しかも4人。登山をするような服装でもなく、ワイワイと楽しそうに会話をしていた。「秩父にも若い女子が行くんだ!?」と驚いたが、そんな日もあるのだろうとさほど気には留(と)めなかった。

 ところがその日以来、レッドアロー号車内で頻繁にイマドキ女子を見かけるようになったのだ。帰りの電車にも、「山おやじ」の後ろには女性グループがいたりする。

 秩父に降り立ったときの空気や流れる時間は以前と変わらない。だが、何かが違っていた。

 どうやら、筆者が見かけた何人かの女性たちは、ある場所を目指していたようだ。

 それは、「三峰(みつみね)神社」だ。

三峰神社を目指す「スピ女」たちが登場

 当時、テレビ番組で「秩父の三峰神社は関東最大のパワースポット」と紹介されたのだ。

 占いやおまじないが好きな女性、いわゆる「スピ女(じょ)」は多い。スピ女は「スピリチュアル女子」の略である。

 都内近郊には明治神宮の「清正の井戸」、東京大神宮、川越氷川神社の「縁結び玉」など、さまざまな有名パワースポットがある(編集部注:それって何?というスピに疎いオジサマはググってくださいませ)。この三峰神社はそれ以上のパワースポットと聞くと、女性でなくとも興味がかき立てられるのではないだろうか。

 ただし、三峰神社は西武秩父駅から地元のバスで約1時間もかかる場所にある。このバスは1~2時間に1本程度しか走っていない。しかも、駐車場に到着してから目的の拝殿までも、そこそこの距離を歩く。ちょっと気軽にパワスポ巡り、なんて生半可な覚悟では行けない場所なのだ。

 しかしそれでも三峰神社には若い女性たちが次々と訪れた。そのパワーはいかほどなのか。運気が上がるなら行ってみたい。なぜならそこは「関東最大」。運の悪さのひとつやふたつ、きっと吹き飛ばしてくれるに違いない!

 そんな思いがあったのかどうかは定かではないが、かくして筆者が繰り返し乗るレッドアロー号の車内は、登山でリフレッシュしたい山おやじと、パワーチャージしたいスピ女で賑わうようになったのだ。近年のこの急激な変化たるや、筆者は素直に驚いている。

関東最大のパワースポットと呼ばれる三峰神社。標高1100メートルの三峰山の山頂にあり、満天の星空を観測できる隠れた天文スポットでもある(写真提供:三峯神社社務所)
関東最大のパワースポットと呼ばれる三峰神社。標高1100メートルの三峰山の山頂にあり、満天の星空を観測できる隠れた天文スポットでもある(写真提供:三峯神社社務所)