そろそろ佳境、日本初の春画展の楽しみ方

――日本全国の美術館が二の足を踏んでいた中、永青文庫で「春画展」が開催されたのは、まさに画期的な出来事だったわけですね。

橋本:ある意味「事件」ですね。結果、大反響だったので、これで流れは完全に変わったと思います。特に美術館側が「あ、(開催しても)大丈夫なんだ」と認識した。来年は京都の細見美術館に巡回しますが、今後もっと春画を観る機会が増えるでしょうね。

――そろそろ東京での「春画展」も佳境ですが(12月23日まで)、リピートする際の楽しみ方を教えていただけますか?

橋本:今回、細川家のコレクションも出品されていますが、その中には超絶技巧を楽しめるものもあります。

 例えば「空押し(からおし)」といって、人間の肌の部分をグッと浮き上がらせ、立体感をつける技術が施されています。そのふっくらとした肌の部分に対し、平面的な服の部分には雲母(きら)を印刷し、キラキラさせてコントラストをつけているとか。一般の人に売るものではなく、お金も手間暇もかかった春画には、肉筆ではない印刷物だからこその表現がある。特にデザインや出版に関わっている人は、興奮すると思いますよ(笑)。

――当時の最先端の技術が注ぎ込まれているのですね。しかも、春画に。

橋本:最初はどうしてもモチーフに目が行きがちですが、リピートの際は、そういう細部にも注目すると楽しいと思います。アンダーヘアの、ものすごく細い彫りとか。縮れ毛が重なっているところなんて、版画でやろうと思ったら、ものすごく大変なんですよ! 彫り師としての最高の技術が、アンダーヘアに投入されているっていう(笑)。そういう可笑しさも含めて、楽しんでいただけたらと思います。

――最後に、女性ならではの春画の楽しみ方を教えてください。

橋本:そもそも、女性と男性で、「そんなに違うのかな?」って思います。江戸時代の人たちが、男女共に楽しんでいたのと同様、今の女性が見ても、何の抵抗もなく面白く感じるポイントがいくつもあると思います。

――春画は、最初から「女性のもの」でもあったわけですね。

橋本:ええ。それに、男女だけでなく、男同士や女同士の営みも作品としてたくさん残っています。どんなジェンダー、セクシャリティの人が見ても楽しめるという意味では、一周回って最先端だったのかもしれないですね、春画って。

Shung Art
Shung Art
小学館/発行 早川聞多/監修 橋本麻里/文、定価8000円(税抜)
「世界が、先に驚いた春画展」
URL/http://www.eiseibunko.com/shunga/
開催日/2015年9月19日~12月23日
場所/永青文庫 特設会場
開館時間/9時30分~20時(入館は19時30分まで)
休館日/月曜日(12月21日は特別開館)
※18歳未満は入場禁止
◆変更履歴:公開当初「永青文庫」の表記に誤りがありました。お詫びして訂正します。本文は修正済みです(2015年12月14日)