五感で感じる魅力的な街=「官能都市」

 不動産・住宅情報サイト「HOME'S」を運営するネクストが9月3日、社内シンクタンク「HOME'S総研」による研究報告書「Sensuous City[官能都市]-身体で経験する都市:センシュアス・シティ・ランキング」(以下、「官能都市」調査)を発表しました。こちらも興味深いランキングとなっています(調査期間は2015年3月23日~29日、サンプル回収数は1万8300件)。

 「官能都市」というのはのHOME'S総研の造語です。「官能都市」調査では、街への愛着を五感で感じるような指標を調査項目として掲げて魅力的な街を調査し、ランキングで示しています。

人との触れ合いや食文化、活動機会に恵まれていて、かつ匿名性のある街って?
人との触れ合いや食文化、活動機会に恵まれていて、かつ匿名性のある街って?

 調査項目の一つ、その街との「関係性」という項目では、「お寺や神社にお参りをした」、「馴染みの飲み屋で店主や常連客と盛り上がった」など、共同体に帰属している実感を味わえたかどうかを聞いています。

 ただ、「共同体に帰属している=地元とつながりがある」という要素が強すぎては、自分の行動が地域住民に筒抜けになる恐れがあり、かえって窮屈。必ずしも住み心地が良いとは限りません。そのため、「カフェやバーで1人で自分だけの時間を楽しんだ」、「路上でキスした」(!)など、匿名性が保たれていたり、出会いやロマンスが生まれる地域性であったりするかどうかも併せて尋ねています。

 また、「身体性」という項目では、体をもって感じることがあるかどうかを尋ねています。「庶民的な店でうまい料理やお酒を楽しんだ」、「地酒、地ビールなど地元で作られるお酒を飲んだ」など、食文化が豊かな街であるかどうか。そして「活気ある街の喧騒を心地よく感じた」、「通りで遊ぶ子供たちの声を聞いた」など、その街を“感じ”、“歩く”ことができるかを聞いています。

 その結果、「官能都市」の上位にランキングされたのは、以下の街でした。

●「官能都市」総合ランキング
(HOME'S総研の調査より)

1位 東京都文京区
2位 大阪市北区
3位 東京都武蔵野市
4位 東京都目黒区
5位 大阪市西区
6位 東京都台東区
7位 大阪市中央区
8位 金沢市
9位 東京都品川区
10位 東京都港区

Sensuous City[官能都市]  調査内容をまとめた冊子の表紙も官能的!
Sensuous City[官能都市]  調査内容をまとめた冊子の表紙も官能的!

 上位は、東京23区、大阪市の各区が並びました。街の特徴としては、古い建物と新しい建物が混在していること、チェーン店から個人店まで多様性に富む商業があること、文化的アメニティが多いこと、そして職住が近接していることが挙げられます。また、「多様な人が住みやすい」、「住人の満足度、幸福度が高い」、「定着意向が高い」など、居住価値の高さもポイントでしょう。

 5位以下に並んだ街では、金沢市が8位に食い込みました。また10位以下になると、東京23区や大阪以外の都市も入ってきます。12位に静岡市、13位に横浜市保土ヶ谷区、14位に盛岡市と続きます。

利便性だけでなく、愛着やにぎわい、体験の多い街が魅力的…?

 街づくりの一環として、各地で行なわれる再開発。それにより、暮らしの利便性が向上する一方で、地元で古くから愛されてきた街並みや、にぎわいのある商店街が失われていくことを嘆く声も多く聞かれます。

 「人気」や「公共サービスの充実」といった指標だけでは、街の住みやすさを測るのは難しいでしょう。今回の「官能都市」調査のように、住む人の「五感」に基づいた生活者目線の評価指標が、街の魅力を浮き彫りにできるのかもしれません。

 みなさんも、今住んでいる街や、これから住もうと考えている街を、「官能的かどうか?」で捉え直してみてはいかがでしょうか。

写真・文/黒田隆憲