酒と塩のマリアージュ。多彩な組み合わせで、楽しく遊べる。日本酒に合う塩、白ワインに合う塩、カタチのオモシロイ塩。ソルトコーディネーター青山志穂さんのお話、前編「ああ!いろんな『塩』を味わう楽しみを知ってしまった!」に続く、後編です。

 日本ソルトコーディネーター協会の青山志穂さん(写真)に聞く、お酒と塩のマリアージュの話。後編をお届けする。

 前回は、苦味のあるビールに苦味のある塩を合わせて旨味(うまみ)を楽しむ方法や、赤ワインに合うトリュフ塩、赤ワインに漬け込んだ塩など調味塩の世界について語っていただいた(前編「ああ!いろんな『塩』を味わう楽しみを知ってしまった!」はこちら)。

 自宅の晩酌で、枝豆をツマミに瓶ビールを飲むときでも、塩を変えるだけで、新しい味の感動が舌先に広がる。

 たかが塩と侮(あなど)ることなかれ。塩に少しこだわるだけで、酒の楽しみはクリエーティブに広がるのだ。

日本酒のアテになるピラミッド状の塩

 「塩は種類が多く、覚えることが多いですが、一般の方は難しいことを考えず、カタチから入るとオモシロイかもしれません。変わったカタチの塩は、舌だけでなく、目も喜ばせてくれます」

 そう言いながら青山さんが見せてくれたのは、塩の結晶の標本。立方体、凝集晶、フレーク(薄い板状)、球状、粉砕、トレミー(ピラミッド状)、棒状、パウダー、顆粒(かりゅう)の9種類。

 塩の結晶の基本は立方体なのだが、育つ条件によって、変わったカタチのものが生まれるという。

 「気軽に使えて面白いのが、薄い板状のフレークと、ピラミッド状のトレミーの塩です。どちらも、シャクシャクとした食感が楽しめるので、お酒のツマミにピッタリです。センスのいいバーで、黒いお皿にピラミッド状の塩を2、3粒のせて出すと、なにこれ!?って感じで洒落(しゃれ)てますよね」

 標本の中のピラミッド状の塩は、地中海に浮かぶ島国キプロスの海水塩、クリスタルフレークソルト。つまんで舐めてみると、しょっぱさの奥に微(かす)かに塩辛のような旨味を感じる。これは、日本酒のアテになる。

 「塩分濃度を高めた海の水を、表面を揺らさず、主に太陽エネルギーを使って低温でじっくり精製していくと、立方体から板状、そして板状からピラミッド状になるんです。小さいのは比較的つくりやすいですが、大きく育てるのは大変です。自然の神秘を感じさせる塩ですね」

 そんな塩の誕生秘話も、呑みの席の楽しいウンチクに使える。

 青山さんに、世界の塩のサンプルを見せてもらった。

 「あと、例えば、球状のお塩は、アフリカのジプチ共和国にある塩の湖で自然にできる塩です。この塩を冷凍庫に入れてキンキンに冷やして、皿に並べて、その上に刺身を置いたり、トマトを置いたりして、じわ~っと塩が溶けだしてきたところを食べるというお洒落な使い方もあります」

 カタチから入る塩の世界。なんとも美味しい遊びに満ちている。