28歳にして本場フランスのミシュランの星を獲得

 レストランを「星」で格付けし評価するガイドブック・ミシュランガイド東京が話題になって久しい。日本に登場して早8年あまりが経過した。今や東京だけでなく京都・大阪、兵庫、北海道、広島、九州など、日本の主要都市域の飲食店がこのミシュランガイドシリーズで扱われている。

 松嶋は1997年、20歳の時に単身渡仏。フランス各地で修行を重ね、2002年、25歳の時にフランス・ニースで自身のレストランを開業する。それから3年後、そのニース近郊を含む南仏地方でとれた地元食材を活かし、かつ斬新な調理方法で創作する料理が評判を呼び、若干28歳にして本場フランスのミシュランの星を獲得した。以来、10年連続でその星に輝いている。

 そして、松嶋にはもう1つ、その星に匹敵する名誉がある。それは、フランスから勲章・フランス芸術文化勲章シュヴァリエを与えられたことだ。フランスの食文化を広めた功績に、フランスという国が動いた格好だ。それほどに、日本人である彼の創りだす料理に舌鼓を打つフランス人が多いという証(あかし)でもある。

受勲式には羽織袴で参列した
受勲式には羽織袴で参列した

 経歴からするとすでに重鎮の領域だが、年齢はまだ40歳に満たない。日本での経験がさほど豊富ではない彼が、なぜ本場フランスで料理の味とセンスを高く認められ、人気を博し続けていられるのか。

 単身渡仏というと、若者特有の勢いかという印象も受けるが、そうではない。当たり前だが、料理は勢いだけで結果を収められるほど甘い世界ではない。松嶋に直接話を聞いてみると、彼の内側には幼き頃から培われた観察眼と深き思慮が存在することが見えてきた。

* ミシュラン・ガイドブックとは、世界的に有名なレストランガイドブック。その始まりはパリ万博が行われた1900年で、自動車を運転する人達に向けた様々なフランスを案内するガイドブック。一連のシリーズの代表的なものがレストラン版である。伝統的に赤色の装丁が特徴で、全世界で毎年数百万部以上が販売されているという。

「KEISUKE MATSUSHIMA」東京店におけるスペシャリテ(看板料理)の1つ、「鎌倉野菜のキュイエクリュ レモングラス風味のアンショワイアード」。スペシャリテにはオーナーシェフの思い入れが表現されていることが多い
「KEISUKE MATSUSHIMA」東京店におけるスペシャリテ(看板料理)の1つ、「鎌倉野菜のキュイエクリュ レモングラス風味のアンショワイアード」。スペシャリテにはオーナーシェフの思い入れが表現されていることが多い