前回の「『女性部下はめんどくさい』もがく女性上司の本音」では、健康社会学者の河合薫さんに、働く女性を取り巻く問題から「マタハラ」について問題提起していただきました。マタハラが横行する背後には、代替え要員による穴埋め策を含めた環境整備の後回しもある。整備を進めることは急務ではありますが、職場でのあつれきを生まないために、いま、私たちができることが何なのかを考察していきます。

 「<女性登用30%>政府断念 20年度目標、分野別数値に政府」――。先週、新聞各紙には、こんな見出しが踊りました。

 あれだけ、「女性活用、女性活用」と念仏のように繰り返し、安倍首相は、2013年にアメリカで行われた国連演説で、女性の活躍を重視し、社会的地位向上に取り組むことを世界にアピール。今年9月の国連演説では、女性管理職の割合に数値目標の設定などを義務付ける「女性活躍推進法」を8月に成立させたと意気揚揚と語っていたのに、ずいぶんとあっさりしたもんです。

 「女性活躍推進」が、新スローガン「1億総活躍社会実現」に変わったあたりから、いやな予感はしていましたが、今更「現実に即した――」って、いったいどういうことなんでしょうか。

 「一体いつになったらフルメンバーで仕事ができるのかと絶望的な気持ちになる」――。

 前回、取り上げた“女性部長”の言葉を思い出してください。

 女性活用が進まなかったのは、“男性社会”の入り口だけを開放し、内部は旧態依然としていて、間取りを変えようともしなかったことも原因のひとつです。

 フルメンバーにするために、どうすべきか? を、一切考えることなく、「あとはよろしく!」とばかりに、現場、とりわけ“女性上司”に押し付けた“現実”が、最大の問題です。そのことに向き合わない限り、どんなに「現実に即した数字=7%(課長級)」にしたところで、意味がない。そんなモン数値目標にしなくとも、自然と達成できる数字でしかないのです。

 冷たいな……と思います。ホントなんで、こんなに冷たいのか、と。

 例えば、最も温かい制度になっているスウェーデンでは、育児休業取得によってほかの従業員の負担が増えることを防ぐ方策が丁寧に施されています。

 なんと、7割以上もの企業が、臨時契約社員を雇うのが、“あたりまえ”なのです。

 しかも、休暇を取得する人と、その間を担う人との間で、十分な引き継ぎ期間を設け、後任者への訓練や研修などもしっかりと行われているため、現場の不満はほとんどなし。女性上司も、男性上司も、同僚たちも笑顔で、「出産する女性」を送り出すことができる。ワーキングマザーたちは、休暇を誰に気兼ねすることなく取ることができます。

 さらに、企業は、短期に雇用した契約社員を正社員に登用する制度を導入したり、契約社員の次の職場に対して紹介状を書いたりするなど、短期契約社員のキャリアアップ向上に協力します。

 産休や育休による“きしみ”が生じないような、最大限の工夫がなされているのです。