作家として第一線を走り続けること30年あまり――。その好奇心と行動力で、運命の扉を次々と開いてきた女性、林真理子さん。年齢を重ね、ますますエネルギッシュな輝きを増す林さんに、9月に上梓した『マイストーリー 私の物語』の執筆裏話をはじめ、仕事観から自身の体験を踏まえた婚活アドバイスまで、さまざまなお話を伺いました。その中から、働く女性に伝えたい言葉を厳選してお伝えします。

◆伝えたい言葉1
「人を羨んでいると、自分の一番大切なものが削れていきます」

林 真理子
林 真理子
1954年山梨県生まれ。日本大学芸術学部卒業後、アルバイトをしながら、コピーライター養成講座に参加。広告制作会社を経て、糸井重里コピー塾に参加。そこで絶賛され、糸井氏の事務所で働くことに。その後、独立。初の著作『ルンルンを買っておうちに帰ろう』(主婦の友社)はベストセラーに。86年、『最終便に間に合えば』『京都まで』で第94回直木賞を受賞。90年、36歳のとき結婚。44歳で長女を出産。週刊誌や女性誌でも連載エッセイを執筆。また、直木賞や吉川栄治文学賞など、多くの文学賞の選考委員も務めている。

――今、「生きづらさ」を抱える女性が増えているように思います。バリバリと仕事をし、出産をしたら、今度は子育てをしながらしっかり働く。やるべき課題が山積みで、プレッシャーを感じるという声も多いです。

林さん(以下、林):以前、『野心のすすめ』でも書いたのですが、「今、幸せじゃないな」とか「ちょっと心が苦しいな」と感じた時は、ひとまず立ちどまって、「私は、本当は何が欲しいのだろう」と、自分ととことん向き合ってみる作業が必要だと思います。

 その上で、「欲しいものを手に入れるにはどうしたらいいか」を考える。得たいものが明確になれば、それに向かっていくしかないわけです。

 例えば、どうしても結婚がしたいと思うなら、結婚相談所に行ったり、周りに「いい人いない?」と声をかけまくる。でも、そういう人に限って、「そこまでして結婚したくない」と、変なプライドを持っていることも少なくありません。

――「本当に欲しいもの」を自問自答してみたら、実は別のものだった、ということもあり得ますね。あるいは気づいているのに、直視することを避けているだけかもしれません。

:それをせずに、他人を妬んだり、不満を抱えてばかりの人生は空しいですよね。人を羨んでいると、自分の中の一番大切なものが削れていきます。そりゃ私だって、お金持ちの専業主婦や、旦那さんに大切にされている奥さんをみると「いいなあ」と思いますよ。でも、それぞれにいろんな人生があっていろんな悩みを抱えていることを、この歳になると知っていますから。

――そうした“負の感情”を払しょくするには、どうすればいいのでしょうか?

:その人たちに負けない「何か」を持つことじゃないでしょうか。どんなことでもいいと思うんです。それがあれば、他人への妬む気持ちや不満は薄れていくはず。人を羨ましがってばかりいたら時間を無駄にしてしまうし、自分を消費してしまいます。

*詳しくは ⇒ 林真理子さんインタビュー(1)

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