「ヒロシです。消えそうな芸人ランキングからも……消えました」――ホスト風のファッションに身を包み、うつむきながらつぶやくネガティブな自虐ネタでブレイクした芸人・ヒロシ。日めくりカレンダー『まいにち、ネガティブ。』(自由国民社)を刊行した。「前向きじゃなくても生きていける」というコンセプトでつぶやかれた31の「ネガティブワード」からなる日めくりカレンダーだ。9月の発売以前からネットニュース、Twitterを中心に話題となり、2万部を突破したというこのカレンダーにヒロシが込めた思いや、制作の舞台裏に迫る。


――日めくりカレンダー『まいにち、ネガティブ。』を刊行されたきっかけを教えてください。

 松岡修造さんの日めくりカレンダー『まいにち、修造!』(PHP研究所)が売れている、というのは知っていました。おもしろいなと思っていたのですが、僕が作り手にまわる機会なんてないだろうと思っていたんです。

 でも出版社の人がポジティブの対角で「ネガティブ」バージョンを作ったらどうだろう、と考えたそうなんですね。そこでネガティブといえば……、ということで、僕にお声掛けくださったんです。

―この日めくりに書かれていること、コンセプトにはとても共感しますね。「ポジティブになれよ!」と言われてなれたら苦労してないよ、って人ってすごく多いと思うのですよ。そんな人たちを掬い上げてくれる。勇気付けられる人も多いのではないでしょうか。

 “ポジティブ=絶対にいいモノ”という風潮がね。そりゃあいいときもあるだろうけれど、そんな風潮自体に疲れてしまう人もいると思うんです。僕もそのひとりですが、そういう人もいるんですよって。

 自然にポジティブになれるのなら、それでいいと思うんですけれどね。

 でもそうなりたくてもなれない人に押しつけるのは、すこし困惑させてしまうだけかと。

 ネガティブにしかなれないときには、無駄にあがくことはせずに。ただ身を任せていればネガティブのままでいたっていいと思います。そうしているうちにポジティブになれるときがきたら、自然となれるかもしれませんし。無理してまで頑張らなくったっていいと思うんです。疲れるだけですから。

――制作過程で苦心された点は?

 日めくりですから、一日一言。コメントを31パターンつくって、それに合う写真を撮影していきました。コメントは特に苦労はしませんでした。普段思っていることを書いただけなので。

――コメントと、ヒロシさんの写真の表情が絶妙にマッチしていて笑っちゃいます。舞台出演されたこともあって、そのときも取材させていただきましたが、私はヒロシさんに演技の素養がおありだと感じています。

 またそんなことを言って……(笑)。いまお店「カフェ&カラオケ喫茶「ヒロシのお店」)を経営しているんだけれど、開店初日にあなたにそう言われた映画監督が遊びにきて、カラオケで昭和歌謡を熱唱して帰りましたよ……。

ヒロシさん発、ネガティブだからこそ見える真理

――中身をいくつかご紹介しながらお話をお聞きしていきます。まずひとつは「やらない勇気!」。これ大事ですね。仕事をしていて最近特に強く感じていることなのですが「やること」を決めるよりも「やらないこと」を決めることのほうが、よほど大事だなと。

 仕事にしろ、プライベートのことにしろ、選ばずになんでもやります! という姿勢は美しいかもしれません。でもいっぽうで、多少は取捨選択することだって大事だと思うんです。

 いやだよ、俺だって氷に飛び込めとかさ……いまさら嫌ですよ、ケガでもしたら危ないですし。

――氷に飛び込め!? ヒロシさん、そんな仕事の依頼きます? いまだに?(笑)

 きますよ。やだよ、北極に行って、氷に、なんて……僕もう43歳ですよ。