女性活躍推進はおろか、男女雇用機会均等法も施行されていなかった1978年に発足した日本ヒーブ協議会。その先進的な活動は、これまでの40年間に、日本の社会にどのような影響を及ぼしてきたのだろうか。

働く女性に寄り添い40年、日本ヒーブ協議会の意義を語る

40年前から活動を続ける働く女性の団体“ヒーブ”

 日本ヒーブ協議会は、働く女性が、生活者と企業のパイプ役としてより良い仕事をするため、また、その能力向上を目的に、様々な企業の消費者関連部門に属する人々が集い、活動している団体。消費者運動が台頭し始めた1978年に、アメリカのHEIB(Home Economists in Business)=企業内家政学士の考えをもとに、日本独自の方針で発足。40年を経たいま、正会員数は75名、所属企業数は62社に及ぶ(2018年4月1日現在)。

 今年9月に設立40周年を迎えるこの日本ヒーブ協議会にて、先日公開講演会が行われた。登壇したのは、日経BP総研フェローの麓幸子。今年、創刊30周年を迎えた日経ウーマンの創刊メンバーであり、編集長を5年、発行人を2年務めた麓が、働く女性、女性と組織を取材し続けてきた一記者の視点と、学術的な観点から、「イノベーションと新たな価値を創出する“ヒーブ”という存在」をテーマに、1時間半にわたって講演した。

公開講演会では、日経BP総研フェローの麓幸子が登壇
公開講演会では、日経BP総研フェローの麓幸子が登壇

ヒーブの存在意義と社会にもたらした価値

 公開講演会ではまず、日本ヒーブ協議会が設立された1970年代から現在までの、働く女性を取り巻く社会環境の変化について分析。その中で、日本ヒーブ協議会の存在意義について、「働く女性の黎明期であった70年代に、企業活動に新たな価値を創出し、数少ない働く女性の間にネットワークを作り出し、働く女性のロールモデルやオピニオンリーダーを生み出してきた日本ヒーブ協議会は、今日の女性活躍につながる道筋を作った、画期的な存在であると思います」と語った。

 また、日本ヒーブ協議会が掲げる“生活者であり企業人である”という普遍的な価値についてこう語った。

 「いま日本の企業では、ダイバーシティ経営の第一歩として女性活躍が、そして働き方改革が進められていますが、これから先、第4次産業革命時代を勝ち抜いていくためには、企業のみならず、個人の中にも多様性を持つことが必要だといわれています。企業人であり、生活者である。誰もがその2つの側面を内包することで、企業にイノベーションや新たな価値が生まれる。日本ヒーブ協議会が40年も前に先駆けて提言していたことが、ここへきてやっと、日本の多くの企業に届き始めたのです。私はいま、この時代の変わり目に、ヒーブという存在の歴史的な意味合いを大いに実感しています」。

 そして講演の最後に、働く女性へのメッセージとしてこう締めくくった。

 「働く女性にとって、いまこそが、千載一遇のチャンスの時。勇気を出して、限りある好機を最大限活かし、人生100年時代を生きるためのキャリアを、自ら再構築してみてください」。

生活者と企業の橋渡しをするヒーブとは?

 企業の消費者関連部門などで働く女性が、生活者と企業のパイプ役として双方の視点で新しい価値を創造・提案し、生活者の利益および企業の健全な発展に寄与することを使命に活動している団体です。

梶原織梨江さん
梶原織梨江さん
日本ヒーブ協議会 代表理事/日本生命保険相互会社