キャリア構築に必要なのは一歩を踏み出す勇気

 1年の派遣期間で得たものは? そう問いかけると、山本さんは「迷ったときに一歩踏み出す勇気」と答えてくれた。どちらかというと、失敗しないため慎重に物事を進めるタイプだったが、ベトナムは環境がまったく異なり、日本の常識が通用しないことも多い。迷ったら行動する。失敗しても別の道が見えれば決して無駄ではない。そう考えるようになったそう。

 帰国後は企画営業部で、インバウンドに関するビジネス創出を目指し、新しいキャリアをスタートさせた山本さん。道を切り拓き、キャリアを構築していくために必要なのが「一歩踏み出す勇気」だ。

 「テーマの一つにショッピングツーリズムの普及があり、今は一部の店舗や地域に限られている観光客の流れを地方にも展開させていきたい。ベトナムでの経験を生かせる仕事なので大きなやりがいを感じています。東南アジアからの旅行者も増えているため、向こうの文化や習慣、私が派遣先で知り合った人のことなど、同僚から意見を求められることもありますね。新たなスタートを切ったばかりですが、迷ったときには一歩踏み出す勇気を持って、これからもいろんな可能性にチャレンジしていこうと思っています」

 ベトナム派遣の経験を新規事業の創出という形で会社に恩返ししながら、山本さんは確実に、新しいキャリアの階段をのぼり始めている。

海外での事業展開を見据えた
“人財”育成につなげたい

 グローバルに事業を展開するには人財育成が急務であり、当社では2011年度から、若手社員を海外の現地法人、代理店に派遣する「トレーニー制度」をスタートさせました。人員も派遣先、派遣国も拡大させようと検討し始めたとき、JICAの「民間連携ボランティア制度」を知り、ぜひ活用したいと考えました。メリットは2つあり、当社の現地法人がない拠点に派遣することで、今までなかった異文化交流と理解ができること。そして、将来のビジネスチャンスが生まれることです。社員の関心も高く、3名を派遣する枠に50名以上の応募があり、選考に苦労するほどでした。もちろん、派遣する社員の人間的な成長も期待しています。苦労も多いと思いますが、いろんな意味でたくましく成長することで、組織にもいい影響があるはずです。新興国で事業を行うには、企業として利益を残しながら、さまざまな社会課題の解決に寄与しなくてはいけません。派遣した社員が、新しいソーシャルイノベーションを生み出す起爆剤になることも期待しています。