「専業主夫」についての著書を出版した少子化ジャーナリストの白河桃子さんインタビュー。前回に続く今回は、政府が推進する「ネウボラ」や、仕事が好きな女性がパートナーに選ぶべき男性などについて話を伺いました。
――「男性に家事や育児にもっと関わってもらう」ための仕組みを作るには、どんな方法があるのでしょうか。
白河さん(以下、敬称略) 男性が強制的に育児を経験できたり、育児経験者と話す機会を作ることが大事です。今、政府が推進している「ネウボラ」を進めるのもそのひとつですね。
――「ネウボラ」というのは?
白河 北欧の育児支援の施設のことです。妊娠から出産、子育て期にかけての包括支援センターで、フィンランドでは、ほとんどの子どもがネウボラを通って生まれてくるといわれています。日本にも今、そういった試みを増やそうという動きが出てきています。
北欧のネウボラでは、妊娠後、専門家から親になるためのアドバイスを受けます。ママだけでなく、パパも一緒です。日本では「母親学級」があるけれど、母親だけじゃダメですよね。男性はやはり自分でお腹を痛めて産むわけではないので、なかなか自覚が芽生えにくいですし、他人や専門家に言葉のほうが響くはず。実際、ベネッセさんが行った調査でも、「両親と配偶者に育児教育をしてほしい」というママたちの要望が多かったそうです。父親には親になるという心構えややるべきことを教え、親たちには、昔とは違う今の育児スタイルについて教えてほしいと望んでいるのです。
――育児の不安や孤独も解消されそうですね。
白河 育児はひとりでできるものではないですからね。繋がりを持つことが大事ですよね。男性が主夫になった場合もそうです。ですから、「主夫の友」の皆さんのようにカミングアウトして、パパ同士のコミュニティを作っているのはすごく良いことだと思っています。子育てをする時には、孤独にならないようにコミュニティがあったほうが絶対にいいですから。いろんな繋がりのなかで互いに励ましあったり、育児のアドバイスを受けられる場が必要です。特に、一度主夫になると、なかなか企業で働くような男性同士のコミュニティに戻れない。合わなくなってくるのでしょうね。
――家庭で、「主体的に夫に家事育児に関わってもらう」ために、妻はどんなことを心がけておくべきでしょうか?
白河 何事も最初が肝心です。まずは、結婚前にしっかりと互いの意志を確認しておくこと。今の男性はなかなか結婚したがらないですから、女子側も切り出しにくいテーマなのかもしれませんが、男性にとっても妻がしっかり働いていくほうが絶対にラクで合理的なんだということを伝える。
新婚時代も尽くしすぎはタブーです! これは私の実体験からも言えますね(笑)。私が結婚した当時は、まだまだ女性が働き続けるということを考えにくい時代でした。私も専業主婦になるつもりで結婚したので、つい油断してやりすぎて(笑)、後が大変でした…。新婚時は、ついやってあげたい願望で張り切ってしまうけれど、なんでもやってもらえると思われると、後々自分が大変な思いをすることになります。これから長い生活が続いていくんだということを忘れないようにしましょう。
そして、育休時の過ごし方も大事です。子どもと迎える幸せな専業主婦期間に流されないで、復帰後の生活のシミュレーションをしつつ、しっかり夫婦で関わっていくスタイルを築くための準備期間として過ごすこと。とはいえ、産後は大変ですから、なかなかそこまで気が回らないし、子どもを育てて夫も育てるなんて負担が大きすぎる。だから、できれば、子どもができる前から話し合ったり、シミュレーションしたりしておくのがベストだと思いますよ。