ビッグワードとは、コミュニケーション相手との間で解釈や認識のズレが生じやすい、抽象的な言葉のことをいいます。たとえば、ミーティングの席で部長が「顧客満足度をより一層高めるために、各自全力で取り組むように」と檄を飛ばしたとしましょう。「努力しなさい」という大まかなメッセージは伝わってくるものの、「顧客満足度を高める」という表現が抽象的で、具体的に何をすべきかが判然としません。ある人は価格を安くすることと解釈するかもしれませんし、またある人は顧客の話をよく聞くことと受け止めるかもしれません。そうなると、結果的に組織の連携が乱れ、トラブルに発展する恐れが出てきます。

 ビッグワードには、いくつかのパターンがあります。上記の部長のように、自分と同じく相手もわかってくれているだろうという希望的観測に基づいて発せられるもののほかに、そもそも理解が不足していて、それが曖昧な言葉となって出てくる場合や、具体的な言葉を使うことで自分の逃げ道を塞いでしまうことを恐れて意図的に使う場合もあります。ビッグワードはその時々の文脈によって変化するので一括りにはできませんが、以下のようなビッグワードになりやすい言葉や言い回しに心当たりがある人は、使い方に注意してくださいね。

●形容詞・副詞
かなり、大変、もう少し、前向きに、早めに、できるだけ……
程度を表すこれらの言葉は要注意です。「早めに」と言われても、明日なのか、3日後なのか、人それぞれ解釈が違います。なるべく具体的な数値を用いて伝えるようにしましょう。

●動詞
検討する、頑張る、善処する、意識する……
便利な言葉ですが、具体的にどんな動きをするのかが全く見えてきません。これらの言葉に頼って問題を先送りせずに、何をどのように検討したり、頑張ったりするのか、相手にも伝わるように考え抜くことが大切です。

●名詞
シナジー、バリュー、インパクト、パラダイム……
カタカナ語や流行り言葉は、言っている本人が理解しないまま、「それらしく」使っていることがあります。意味を聞かれたときに平易な日本語で言い直せないものは控えましょう。

●接尾語
解決策「など」を検討します
私「的」には……
組織「力」の向上を……
このような名詞のあとにつく言葉もビッグワードになりやすい性質があります。「~など」「~的」を無意識に使うと、その前の言葉がぼんやりして、その威力を失います。また、「~力」のような言葉は、具体性を欠くことがあるので、どういう力なのかを正しく認識した上で使いましょう。