加齢に伴う白髪を止めることはできなくても、遅らせることは可能! そのために忘れてはならないキーワードが「血流アップ」と「抗酸化」。ちょっとした積み重ねで髪は確実に変わります。

白髪の大敵は酸化ストレス&黒髪のもとへの栄養不足 だから血流UPと抗酸化が重要!

 「白髪には、環境や生活習慣などの要因が大きく影響していると考えられる」と話すのは、岐阜大学大学院医学系研究科青木仁美講師。「特に喫煙や偏食などは活性酸素を発生させる要因となり、黒髪のもとを作る色素幹細胞にダメージを与えやすい。また、血流が悪いと毛根への栄養の供給が滞り、色素幹細胞の働きを助ける周囲の環境も正常に機能しにくくなる」(青木講師)。色素幹細胞が残っているうちは、一時的に白髪になっても黒髪に戻る可能性はある。血流UPと抗酸化ケアを行おう。

黒髪/黒髪のもとを作る色素細胞が供給され黒い毛が生える

【ここが重要!】
色素幹細胞が作り出した色素細胞が毛母(髪を作り出す領域)に届くと、毛にメラニン色素が供給されて黒髪になる。色素幹細胞の働きには、「バルジ領域」と呼ばれる、色素幹細胞を維持する場所の状態が大きく影響する。

白髪/色素細胞が供給されず、髪のもとはもはや黒くならない

白髪の色素幹細胞の状態には幹細胞がなくなっているパターンと、幹細胞はあるが、うまく働かなくなっているパターンがある。後者であれば黒髪に戻る可能性がある。

酸化ストレスや放射線の照射など遺伝子にダメージを与えるストレスが加わると、色素幹細胞が減少し、メラニン色素が消失する
酸化ストレスや放射線の照射など遺伝子にダメージを与えるストレスが加わると、色素幹細胞が減少し、メラニン色素が消失する

【ここが問題!】
酸化ストレスなどによって毛包幹細胞など色素幹細胞周囲の環境がダメージを受けると、色素細胞が作られなくなり、毛母への供給も滞る。その結果、白髪になる。

黒髪を守る3つの対策

 頭皮マッサージや育毛剤は、薄毛対策で白髪には関係ないと思うなかれ。「黒髪のもとを作る色素幹細胞も、発毛を司る毛包幹細胞も、同じ“バルジ領域”に存在している。マッサージによる血行促進や、育毛剤の有効成分でここに働きかけることは、結果的に白髪予防にもつながる」(青木講師)。

 現在は薬機法のルールで白髪改善効果をうたった育毛剤は市販されていないが、「サンショウエキスやホップエキスなど色素細胞を活性化する働きが認められている成分を含有したものはある」(青木講師)。

 ただし、髪の状態が良くなってきた、あるいは効果を実感できないからといって、マッサージや育毛剤を使ったケアをやめるのはお薦めしない。洗顔や歯磨きなどと同じように、毎日の日課として継続的にバルジ領域の環境を保つことが将来の髪のためには大切だからだ。

 「頭皮マッサージには健やかな髪を育てる効果もあるので、ツヤ髪のベース作りとしてもお薦め」(美髪アドバイザーの田村さん)。

 また、「毛根の状態は、全身の健康状態の影響を受ける。白髪予防に良いからと特定の食品ばかりとるのではなく、バランス良く栄養摂取を」(青木講師)。

血流UP対策1

血流アップマッサージで【黒髪のもとに栄養を届ける】
「髪を構成する成分は血液を通じて毛根へ送り込まれる。血流を促進するためには、マッサージで頭頂部のまわりを中心にマッサージし、よくほぐすことが大切」(田村さん)。最初に耳の後ろ~首をほぐすとより血流が良くなりやすい。

耳の後ろ~首をほぐす
耳の後ろ~首をほぐす
両手の人さし指、中指、薬指の腹を両側の耳の後ろ~首に当て、小さく「の」の字を描くように3秒マッサージ。首まわりのコリがとれる
こめかみから頭頂部、生え際から頭頂部をそれぞれほぐす
こめかみから頭頂部、生え際から頭頂部をそれぞれほぐす
こめかみから頭頂部まで「の」の字を描くように30秒マッサージ。次に生え際から頭頂部まで押し上げるように「の」の字で30秒動かす

血流UP対策2

基本は栄養・睡眠・禁煙【黒髪のもとを守る】
黒髪のもとの大敵・酸化ストレスは、喫煙や偏った食事、過度の運動または運動不足などによって高くなる。喫煙習慣があるなら禁煙は必須。亜鉛や銅などのミネラルを含む、バランスの良い食生活も大切だ。酸化ストレスの除去には睡眠が重要。

血流UP対策3

育毛剤で頭皮ケア【黒髪のもとを作りやすくする】
育毛剤には血流を促進して毛根に栄養を届ける作用があるほか、ニコチン酸アミドなどの抗酸化成分を含むものも多い。「有効成分が毛根に届くときに、色素細胞を活性化するシグナルにも働く。黒髪を増やす効果は十分期待できる」(青木さん)。

この人たちに聞きました
青木仁美講師
岐阜大学大学院医学系研究科
再生医科学専攻 再生分子統御学 組織・器官形成分野。岐阜大学農学部で品種改良や遺伝・育種の分野を学び、その後「発生学」の研究室を経て、医学系研究科に転科。皮膚や毛髪の色を司る色素細胞の研究に取り組む。

田村マナさん
美髪アドバイザー
これまで1万5000人以上が体験した「美髪メソッド」を開発し、推奨。薄毛や抜け毛、白髪などに悩む幅広い年代から支持されている。『大人の「品」は艶髪でつくられる』(ワニブックス)など著書多数。

取材・文/やまきひろみ 写真/鈴木 宏(モデル) スタイリング/椎野糸子 ヘア&メイク/依田陽子 モデル/MIKA イラスト/川野郁子 図版/三弓素青

「これ以上の情報をお読みになりたい方は、日経ヘルス誌面でどうぞ。」

■ 雑誌(紙版と電子書籍版)
日経BPSHOPで購入する
AMAZONで購入する
楽天ブックスでで購入する
セブンネットショッピングでで購入する
日経ストアで購入する
全国の書店、コンビニエンスストア、駅売店、ネット書店で購入できます。