いつ、どんな検査を受ければ、がんで亡くなるリスクを減らすことができるのか。女性が受けておきたい5つのがん検診の受けるべきタイミングや効果的な受け方を紹介する。2人に1人ががんになる時代、がんのリスクを高める生活習慣も知っておき、賢くがんを防ごう。

乳がん

40歳以上は2年に1回乳腺の状態をマンモグラフィで見る

 乳がん検診は40歳以上で2年に1回、乳房専用のレントゲン検査である「マンモグラフィ検査」が基本だ。ただし、内科医で人間ドック認定医の近藤慎太郎さんは「乳腺の密度が高い高濃度乳房(デンスブレスト)の人は、超音波(エコー)検査の併用を」と薦める。乳腺の密度が高いとマンモグラフィでは乳房全体が白く写るため、がんの白い影を見逃す可能性があるからだ。「母親や姉妹など近親者に乳がんを経験した人がいる場合は、30代から検診を始めてもいい」(近藤さん)。自分がデンスブレストかは、結果説明時などに医師に確認を。

マンモグラフィの画像は乳腺の濃度によって4段階に分けられる。乳腺濃度が高くなるほど白く写り、がんを見つけにくくなる。(画像提供:NPO法人乳がん画像診断ネットワーク)
マンモグラフィの画像は乳腺の濃度によって4段階に分けられる。乳腺濃度が高くなるほど白く写り、がんを見つけにくくなる。(画像提供:NPO法人乳がん画像診断ネットワーク)
月経後は乳房の痛みを感じにくい
「マンモは痛い」というイメージを持つ人も多いかもしれないが、東京都がん検診センター放射線科技師長の井手朋恵さんは「感じ方には個人差がある」と指摘する。乳腺が重ならないように広げて乳房全体を写すため、若い人や月経前で乳房が張っている場合は、痛みを感じやすくなる。「痛みなど、検査に対して不安があるときは検査前に技師に相談して」(井手さん)。

がん検診を受けていても心配…

大規模研究で明らかになったがんのリスクを下げる生活習慣を予防に役立てよう
 国立がん研究センターでは、がんの予防研究に特化した研究班が、科学的根拠に基づいた日本人のためのがん予防法を公表*している。「禁煙、節酒に加えて、ここに示した食事、身体活動、適正体重の維持の5つの健康習慣をすべて実践した場合には、女性ががんになるリスクは約40%低下すると推計されている」と研究班の井上真奈美部長。がんを予防するためには、日ごろからこうした健康習慣を心がけることも大切だ。
http://epi.ncc.go.jp/can_prev/

大規模研究で明らかになった「がんを予防する5つの生活習慣」

POINT1・活発な身体活動は大腸がん・乳がんのリスクを下げる
「活発な身体活動」とは、毎日60分歩く程度の身体活動に加え、息がはずんで汗をかく程度の運動を1週間に60分程度行うのが目安。運動習慣はがん以外の生活習慣病の予防にも有効だ。

POINT2・やせすぎ・肥満は乳がん・大腸がん・肝がん・子宮内膜がんのリスクを上げる
がんになるリスクは肥満だけでなく、やせすぎでも高まることがわかっている。「体重(kg)÷身長(m)2」で算出するBMI値は、21~25の適正範囲になるよう管理を。

POINT3・高塩分食品は胃がんのリスクを上げる
塩分(ナトリウム)全体の摂取量とがんとの因果関係は明らかになっていないが、塩辛や塩蔵魚卵など塩分濃度の高い食品のとりすぎは、胃がんのリスクを「ほぼ確実」に増加する。

POINT4・野菜・果物不足で食道がんのリスクを上げる
野菜や果物不足は食道がんだけでなく、胃がんのリスクを上げる可能性も。野菜・果物は1日400g(野菜を小鉢で5皿分+果物を1皿分)を目安に毎日食べるよう心がけて。

POINT5・飲食物を熱いままとると食道がんのリスクを上げる
飲み物や食べ物は熱いままとると、口腔内や食道の粘膜を傷つけることで、食道がんのリスクが「ほぼ確実」に高まる。熱い飲食物は少し冷ましてから口にする習慣を。

(国立がん研究センター作成「科学的根拠に基づくがん予防」より抜粋)

この人に聞きました
井上真奈美部長
国立がん研究センター社会と健康研究センター予防研究部
筑波大学医学専門学群卒。愛知県がんセンター研究所、東京大学などを経て、2017年より現職。専門は疫学と予防医学。

取材・文/田村知子

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