近ごろ疲れすぎて息をするのも苦しい……。そう感じる人は、夜寝る前の呼吸法がお薦め。深い呼吸ができるようになると、気持ちがラクになるだけでなく、基礎代謝も上がり、冷えやむくみも解消し、やせやすい体質になります。

 東京・渋谷で呼吸法を指導するウタール ヨーガ・ヒーリングスクール代表の椎名慶子さんは「上手に呼吸ができないと駆け込んでくる女性が多い」と話す。こうした人は、緊張しやすく、呼吸に関わる胸まわり(胸郭・きょうかく)の筋肉が凝っているという。

 「例えば窮屈なブラウスを着ると息が苦しいのと同じ。肺を取り囲む胸郭を構成する肋骨を動かす筋肉が凝っていると、肺も横隔膜も十分に動けず、呼吸が浅くなる。眠りも浅くなりやすく、疲れも取れにくい」(椎名さん)。胸郭が動きにくい人は、姿勢も悪く、下腹がポッコリと出た体形にもなりやすいという。

 そんな人にお薦めなのが、ヨガ式の「完全呼吸法」だ。胸とお腹を大きく動かして呼吸することで、凝りがちな胸まわりの筋肉が満遍なくほぐれる。

 行うタイミングは、寝る前がお薦め。呼吸が深くなり、全身がほぐれ、血流も改善する。「睡眠の質も良くなり、疲れにくくなったという生徒さんが多い。凝り固まった筋肉を刺激する簡単な準備運動をした後で行うと、より効果がアップします」(椎名さん)。胸まわりがほぐれることで姿勢が整い、下腹ポッコリの体形も改善する。

呼吸法の前にやりたい、さすり&伸ばしメソッド

1カ所各20回・胸まわりをほぐす【デコルテ&脇さすり】

まずはデコルテや脇の筋肉をゆるめよう。胸まわりが大きく動きやすくなる。

(1) 鎖骨の下を斜めにさする
左手を右の鎖骨の下に置く(できれば直に肌に触れる)。斜めに20回、皮膚がずれ動く範囲で大きく動かす。反対側も同様に。

(2) 肋骨のまわりの筋肉を上下と横にさする
脇からアンダーバストまでを上下に20回さする。次に脇に手をあてて肋骨の向きに合わせて斜めに20回さする。反対側も同様に。

左右3セット・体の側面をじっくり伸ばす【脇伸ばしストレッチ】

パソコンやスマホで前かがみの姿勢が続くと脇も縮みがち。気持ちよくストレッチして胸郭を柔軟に。

(1) 息を吐きながら脇を伸ばし、3呼吸
足を軽く組んで座る。左手は床に置く。右腕は上に伸ばし、息を吐きながらそのまま左に倒れる。脇が伸びた状態で息を吸い、一瞬止めた後、吐く。3呼吸。

(2) さらに脇を伸ばしてゆっくり3呼吸
(1)の状態から、前かがみにならず、痛みを感じない程度にさらに脇を伸ばした状態で、ゆっくりと3呼吸繰り返す。反対側も同様に行う。

6呼吸・寝る前5分で毎日やろう【完全呼吸法】

 「現代女性は常にストレスにさらされ、交感神経が優位な状態が続き、上半身に余計な力が入っている。最初は上手に呼吸ができなくても、胸とお腹を動かそうと意識するだけで、体は変化します」(椎名さん)。

 寝る前に胸式呼吸と腹式呼吸を合体させたヨガ式の「完全呼吸法」でゆっくり呼吸すると、副交感神経が優位になる。

 また、横隔膜など筋肉を使うため、基礎代謝が上がり、続けることで、「お腹まわりの筋肉が引き締まる効果も感じるはず」(椎名さん)。

(1) 胸とお腹に片手ずつのせる
膝を立てて横になる。息を吸い込む部分がわかりやすいよう、片手を胸の上に、逆の手をお腹の上に置く。力を抜き、息を吐いて準備する。

(2) 鼻から息を吸ってお腹にためる
4秒かけて、ゆっくり鼻から息を吸い、お腹にためる(腹式呼吸)。お腹に置いた手を押し上げるイメージで。

(3) お腹はそのまま、鼻から胸に吸ってためる
お腹にためた息はそのまま、4秒かけて、鼻からゆっくり息を吸い、胸にためる(胸式呼吸)。首の下まで空気がたまっているイメージ。

(4) 空気をためたまま4秒間、息を止める
腹から胸まで空気がびっしり詰まっている状態で、4秒間、息を止める。苦しかったら少し吐いて、少し吸う。

(5) 胸の空気を口からゆっくり吐き出す
胸にためた空気を、ゆっくりと4秒かけて吐き出す。胸に置いた手が背中側に近づくようなイメージで。

(6) お腹の空気を口からゆっくり吐き出す
お腹にためた空気を、ゆっくりと4秒かけて吐き出す。完全に吐き切ったら、(2)に戻る。これを6呼吸行う。

この人に聞きました
椎名慶子さん
ウタール ヨーガ・ヒーリングスクール代表
ホットヨガスタジオLAVAの創業インストラクター。ニューヨークで全米YOGAアライアンスを取得後、日本とインドで瞑想やヨガ哲学を学ぶ。瞑想アプリ『MEISOON』監修。著書に『心と体によく効く引き寄せ瞑想ヨガ』(日本文芸社)ほか。

取材・文/別所あやこ 写真/鈴木 宏 スタイリング/中野あずさ(biswa.) ヘアメイク/薄葉英理(ロッセット) モデル/島村まみ

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