医療技術や栄養学の進歩などによって、人生100年という時代がやってくると話題になっています。課題は、お金、仕事、健康。そのうち、日経ヘルスでは、女性の健康面に絞って、今からどういった考え方で、何をすべきかという“健康戦略”についてまとめました。

 「単に長生きはしたくない。でも、“元気で”長生きしたいというのが多くの人の本音だ」と東京都健康長寿医療センターの大渕修一さんは話す。

 不慮の事故、深刻な病気など、私たちには対策しようのない出来事は起こってしまう。その一方で研究や調査により、女性が長く“元気で”いるために必要な対策も明らかになりつつある。

 女性の100年、取材をもとに最低限どんな対策をすべきか年代ごとにまとめたのが上表だ。閉経までは、PMS(月経前症候群)や子宮内膜症など、月経にまつわる不調や疾患に悩まされる人が多いが、閉経を境に女性ホルモンが減ると、骨は弱くなり、血管は硬くなる。筋肉も加齢とともに減っていく。骨、筋肉、血管。女性の人生100年時代には、これらのケアが重要になる

50代以降は食事より運動 運動は骨・筋肉、脳にも効く!

 上記でも解説したように、最も大切なのは、運動だ。関節を守ったり、骨粗鬆症対策として重要なのはいうまでもないが、運動は認知機能の低下も防ぐ。

 大渕さんは「認知機能低下の予防に有効な方法として、食事、運動、知的刺激の3つが、観察研究によって示されているが、介入研究によって効果が確実とされているのは運動だけだ」と解説する。

 では、どんな運動をどのくらい行ったらいいのか、大渕さんは「筋トレでも有酸素運動でもいい。鍛えることが大切だ。ただ、若いときは違う。いきなり激しい運動をしてケガをしては元も子もない。自分のレベルを知り、筋肉がハリを感じる程度に筋肉を少しいじめるぐらいの強さが大切だ」という。

 ただ、その際、「筋肉に効いているか骨に効いているかを意識してほしい」と話す。筋トレはゆっくりとした運動10回を1セットとして3セットくらい、骨トレでは衝撃を感じる運動を1日50回くらいが目安だという。

 例えば、「階段の上り」。階段をゆっくり上ると、太ももやふくらはぎに負荷がかかる“筋トレ”になる。一方、「階段の下り」。速くリズミカルに下りると、このとき足から背中の骨を通って頭の先まで軽い衝撃が伝わる。これが“骨トレ”になる。

 一方、「食事は気をつける必要がないの?」と思う人も多いだろう。大渕さんは「もちろんバランスがよい食事は大切。だが、50代以降は食事を減らすダイエットは再考してほしい。高齢者で問題となる低栄養につながりかねない」と話す。

運動習慣はこんなにいい

● 筋肉・骨を鍛え寝たきりを予防
● 関節をサポートして痛みを予防
● 血糖を調節、糖尿病を予防
内臓脂肪を減らす
● 脳神経を刺激し、認知症を予防
● 血中脂質を改善、動脈硬化を予防

やはり足腰! 歩く速さは健康寿命に関係
体の機能のどのような変化が要介護と結びついているか大渕さんが調査したところ、関係が深かったのは「歩く速さ」「片足立ち」だった。足腰が大切というゆえんだ。
この人に聞きました
大渕修一さん
東京都健康長寿医療センター
高齢者健康増進事業支援室研究部長医学博士

国立療養所東京病院附属リハビリテーション学院卒業。米国ジョージア州立大学大学院保健学研究科修了。毎年、板橋区の約1000人の高齢者を調査。「女性は尿もれがあると、外出しなくなり、足腰にも影響する」。

取材・文/荒川直樹、白澤淳子(編集部)

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