昔から健康にいい飲み物として有名な甘酒。“飲む点滴”と言われるほど、栄養価の高いことは知られていたが、実は腸内環境の改善に効果があることが分かりました。便秘タイプ別にお薦めのちょい足しレシピも合わせて紹介します。

甘酒を効かせるには1日1杯からスタート!

腸内環境を改善するのは、麹に含まれる「グルコシルセラミド」。1杯の甘酒(200ml)には最大4.15mg含まれ、「和食中心の生活に1杯加えることで効果が期待できる」(北垣教授)
腸内環境を改善するのは、麹に含まれる「グルコシルセラミド」。1杯の甘酒(200ml)には最大4.15mg含まれ、「和食中心の生活に1杯加えることで効果が期待できる」(北垣教授)

 「美肌ドリンク」「飲む点滴」と言われる甘酒には、お通じ改善にも効果的である可能性――。そんな研究結果が明らかになった。佐賀大学の北垣浩志教授によると、甘酒の原料である麹に含まれる成分「グルコシルセラミド」が、腸内で“善玉菌”を増やすため、「便秘予防や改善に効果が期待できる可能性がある」(北垣教授)と言う。

 グルコシルセラミドは、こんにゃくなどにも含まれる成分。しかし小腸で吸収され、お通じに関係する大腸内の環境を改善するとは考えられていなかった。北垣教授らのマウスの実験で、「麹由来のグルコシルセラミドは他のものと化学構造が異なるので大腸まで届き、ブラウティア・コッコイデス菌という“善玉菌”を増やす」(北垣教授)。

 必要なグルコシルセラミドの量は、「動物実験から換算すると、体重60kgの人で1日100㎎。200mlの甘酒には最大4.15㎎のグルコシルセラミドが含まれるが、もともと和食中心の食生活では、グルコシルセラミドを1日26~7㎎程度摂取できている」(北垣教授)。甘酒に加え、味噌や漬物、食酢など伝統的な和食の食生活なら、「甘酒1杯を加えるだけでも、便秘改善の効果が期待できる可能性がある」(北垣教授)。

 他にも「甘酒には麹菌の作用でできたオリゴ糖が含まれる。オリゴ糖は腸内の乳酸菌の良いエサになることが期待できる」と明治大学の中島春紫教授。

 酒粕の甘酒にはレジスタントプロテインという、お通じ改善に効果が期待できる成分が含まれている。これは、腸消化されにくいたんぱく質で、便を軟らかくする。

甘酒がいいワケ(1) 麹甘酒で腸内の善玉菌が増える

麹由来のグルコシルセラミド1.0mgをマウスに1週間、与えた実験で、「腸内細菌叢を調べたら、善玉菌の一種であるブラウティア・コッコイデス菌の割合が与える前に比べて増えていた。今後、ヒト試験などでの有効性についても確認していきたい」(北垣教授)。(データ:Hamajima et al.SpringerPlus; 5, 1321, 2016)

甘酒がいいワケ(2) 酒粕甘酒でお通じが良くなる

酒粕50gが入った甘酒300mlを1日1回、男女12人に3週間飲んでもらい、排便回数と排便量を調べた。排便回数が有意に増えた人は8人。また排便量が有意に増加したのは10人だった。(データ:醸協;107,5, 282-291, 2012)

ちょい足し1杯でスッキリ効果アップ!・便秘タイプ別 甘酒レシピ

 便通改善には1日1杯の甘酒だけでも効果は期待できるが、バリエがあると続けやすい。

 お薦めなのが、「便秘のタイプ別に、合う食材をちょい足しすること」とコロンハイドロセラピストの齊藤早苗さんはいう。

 今回、齊藤さんに便秘タイプ別のちょい足し食材を教えてもらった。どれもちょっと加えるだけだから1分もかからず完成する。味の変化も楽しんで。

運動不足による便秘に…たんぱく質をプラス【きな粉・黒ゴマ甘酒】

運動不足の人は筋力が足りていない。そこで筋肉の元になるたんぱく質のなかでも、甘酒に合わせやすいきな粉をプラス。黒ゴマとともに香ばしさが加わり、甘さが和らぐ。

1杯分 208kcal

材料(1杯分)
甘酒 …………………… 200ml
きな粉 ………………… 少々
黒すりゴマ …………… 少々

作り方
甘酒200mlにきな粉と黒ゴマをそれぞれひとつまみ入れる。


ストレスによる便秘に…香りでリラックス【ミント甘酒】

イライラをしずめてリラックス効果のある香り高いハーブをプラス。ミントはペパーミント、スペアミントでOK。ショウガのように刺激の強いものは避けて。

1杯分 203kcal

材料(1杯分)
甘酒 ……………………… 200ml
フレッシュミントの葉 … 少々

作り方
甘酒200mlにミントを手でちぎったものをひとつまみ入れる。


この人たちに聞きました
北垣浩志教授
佐賀大学農学部生物環境科学科
東京大学大学院修了。同大学大学院・非常勤講師などを経て2015年から現職。発酵と酵素の機能食品研究会・理事、佐賀大学・麹セラミド研究所長なども務める。

中島春紫教授
明治大学農学部
東京大学大学院農学研究科博士課程修了。農学博士。東京大学大学院助教授、明治大学農学部助教授などを経て、2007年から現職。主な著書に『日本の伝統 発酵の科学(ブルーバックス)』(講談社)など。

齊藤早苗さん
看護師
コロンハイドロセラピスト

米国で腸内洗浄のライセンスを取得。対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座でコロンハイドロセラピー(医療機関での腸内洗浄)を行う。

取材・文/岡本 藍(編集部) 写真/福知彰子 料理レシピ&スタイリング/タカハシユキ 栄養計算/内山由香(食のスタジオ) グラフ/増田真一

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