オフィス着の代名詞的な存在のパンツルック。今や定番的コーデとなったジェンダーミックス。どちらもモードの巨匠、イヴ・サンローランが広めたとされる。12月4日に日本でも公開される伝記映画『サンローラン』には、ファッションと真面目すぎるほど真面目に向き合った巨匠イヴ・サンローランの姿が描かれている。普段はあまり意識しないファッションの「意味」や、おしゃれとの向き合い方を考えるきっかけになりそうな作品だ。

◆ジェンダーレス、アート×ファッション、プレタポルテ
(C) 2014 MANDARIN CINEMA - EUROPACORP - ORANGE STUDIO - ARTE FRANCE CINEMA - SCOPE PICTURES / CAROLE BETHUEL
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 メンズ風のチェスターコートを羽織ったり、英国紳士っぽいレースアップ革靴を履いたり。近頃はマニッシュな要素を取り入れる「ジェンダーミックス」が広がってきた。さらに進んで、性別をぼかすような「ジェンダーレス」も浮上。オフィスでも女性のパンツ姿は当たり前の風景となっているが、こういったスタイリングは早くからイヴ・サンローラン氏が手がけてきたものだ。上手に着こなすには、メンズライクに寄せすぎないで、しっかりフェミニン物を引き合わせて、互いの持ち味を引き立て合うコーディネートを意識したい。

(C) 2014 MANDARIN CINEMA - EUROPACORP - ORANGE STUDIO - ARTE FRANCE CINEMA - SCOPE PICTURES / CAROLE BETHUEL
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 イヴは熱心なアートコレクターだった。没後の遺品オークションは記録的な落札額になったほど。映画の中でもポップアートの代名詞的存在だったアンディ・ウォーホルとの交遊が描かれている。抽象絵画の作品をワンピースに写し取った「モンドリアン・ルック」はアートとモードを融合させた最高の成功例と言える。「アート×ファッション」の流れは今も勢いづいていて、退屈に見えやすい冬ルックを盛り上げるのに使える。幾何学的モチーフは落ち着きや理知的ムードを、ハンドペインティング柄は躍動感やポジティブさを呼び込んでくれる。

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 意外な遺産もイヴはのこした。最大の貢献はプレタポルテ(高級既製服)を広めたことだろう。それまではオートクチュール(注文服)がモードの代表格だったが、サンローランが力を入れたおかげで、今ではプレタポルテが主流となり、そこから派生したデザインがリアルファッションに落とし込まれている。映画の中でサンローランの経営陣がオートクチュールとプレタポルテを巡って激しくやり合うシーンは当時の事情を物語る。ごく限られた富裕層や権力者のものだったハイファッションが広く消費者に浸透していった「ファッションの民主化」を方向づけた点でもサンローランは時代の先を読んでいた。

 現代でもオートクチュールとプレタポルテの主要コレクションで発表された新トレンドはリアルシーンに大きな影響をもたらす。流行に乗る、乗らないは自在に判断すればよいが、大きな傾向をつかんでおけば、コーデに自信が持てるうえ、着回しにも役立つ。新テイストを少し加えるだけで、着姿を新鮮に見せられるからだ。