ジェンダーレス、ミニマルな着映え

COS 2016-17秋冬コレクション
COS 2016-17秋冬コレクション

 襟なしブラウスとワイドパンツのコーディネートは、性別にとらわれない「ジェンダーレス」のムードを宿した。ゆるく結んで、余った端を長く垂らしたベルトが飾らないエレガンスを薫らせる。パンツはややマニッシュなシルエットで、当時は男性中心だった抽象絵画のシーンに数少ない女性として独自の地位を築いたマーティンの立ち位置を示すかのよう。アクセサリー類を減らして、余計な飾り気を遠ざけた「ミニマル」な服に語らせるのが上手な着方だ。

COS 2016-17秋冬コレクション
COS 2016-17秋冬コレクション

 キーモチーフのグリッドはジャケットにも配されている。ボタンが見えないフロント仕立てにして、ミニマルな着映えを印象づけた。こちらも中性的な見え具合。女っぽさを押し出していない分、シーンを選ばずに着て行けそう。パンツのウエストから垂らした共布のベルトがリラクシングな気分を呼び込んでいる。幾何学的手法を用いながら、ヒューマンなあたたかみを失わなかったマーティンのアプローチにも共通する、やさしげなシンプルだ。色数を抑えて、微妙な色の違いを際立たせるバランス感を意識したい。

「COS×Agnes Martin」コラボレーション

COS 2016-17秋冬コレクション
COS 2016-17秋冬コレクション
ソロモン・R・グッゲンハイム美術館『AGNES MARTIN回顧展』
ソロモン・R・グッゲンハイム美術館『AGNES MARTIN回顧展』

 日本でもおなじみになった「COS」は、「H&M」グループのハイブランドと位置づけられ、ブランド名は「Collection of Style」の略。モダンで機能的なデザインが持ち味の一つとなっている。アーティストとのコラボレーションに熱心なのも「COS」の特徴的な取り組み。アートをサポートして、シーズンを越えて長く着られるタイムレスなデザインを生み出している。今回のカプセルコレクション(限定商品)は2016年10月7日に発売される予定だ。売上の一部はAgnes Martin Foundationに寄付される。

 やりすぎない進化系アートルックは一見、アート由来とは見えないが、美意識に裏打ちされたデザインが着る人にまでグッドセンスをまとわせてくれる。主張が強くない分、自分好みにスタイリングしやすいのもいいところ。アートを宿した服は1点差し込むだけでも、着姿の格上げにつながり、着こなしのムードメーカになってくれるから、賢く取り入れてみたい。

Agnes Martin回顧展
2016年10月7日~2017年1月11日
URL:https://www.guggenheim.org/exhibition/agnes-martin

文/宮田理江 画像協力/COS