◆アイリス流の着こなしは奥が深い
(C) IRIS APFEL FILM, LLC.
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 若々しい着姿のアイリスには、米国のあちこちから講演やイベントの依頼が舞い込む。大事な点は、その装いに彼女がまといたいと思う気持ちが素直に表れているところだ。映画に記録された彼女の名言は、ファッションとの向き合い方を変えるうえでの「気づき」をくれる。「人と同じ格好をしないのは、自分の意見を持つということ」という言葉は、「悪目立ち」を避けて、上っ面の安心を買おうとしてついつい「横並び」に走ってしまいがちな気持ちに「待った」を掛ける。

 ターコイズブルーやイエローなどの「強め色」をおじけずに着こなすのも、アイリスのお得意。レザーやフリンジ、フェザーといったヒッピー、ロック風味を帯びた素材もお手のもの。自らのアイコンとしている特大のアイウエアは何種類も持っていて、気分や着こなしに合わせて使い分ける。

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 アイリスのスタイリングがすごいのは、単に収蔵品が充実しているからではなく、本人の意思に基づくコントロールがしっかり働いているから。主張があるアイテム同士をミックスしても、バランスが破綻しないのは、ちゃんとシナリオがある証拠。よく見ると、黄色とブルー、赤とターコイズなど、互いを引き立て合う「好相性カラー」を選んでいて、色が喧嘩しない目配りが行き届いている。ボリュームのめりはり出しにも抜かりがない。アクセサリーに天然石を使って、ナチュラル感を出したり、年齢が出やすい手首をゴツめアクセで彩ったりと、工夫の細かさには感心させられる。

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 ただのおしゃれフリークではないアイリスは、ビジネスパートナーでもあった夫と互いを支え合ってきた。映画ではアイリスの並外れたファッション愛を穏やかに見守る夫の姿も収められている。「人の目を気にするのではなく、自分のために服を着る」と言い切る彼女の有言実行ぶりは、90歳をとうに過ぎた本人を元気づけてもいるようだ。好きな服に袖を通す瞬間のワクワク感を今も忘れないアイリスは、おしゃれとのもっとポジティブなつきあい方を自然体で私たちに教えてくれる。

文・/宮田理江

映画『アイリス・アプフェル! 94歳のニューヨーカー』
3月5日(土)角川シネマ有楽町他全国ロードショー
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URL:http://irisapfel-movie.jp/