結婚、出産や夫の転勤など様々な事情で退職し、家族との時間を大事にして専業主婦に徹してきたけれども、子どもも手がかからなくなった今、新たなキャリアを見つけたい。パートや非正規で働いたりしてきたけれども、そろそろフルパワーで仕事を始めたい。多くの女性が40代からキャリア人生を再スタートさせています。

 社会も40代専業主婦の「社会復帰」を応援しています。アベノミクスでは女性活躍推進を経済成長戦略の一つとして掲げていますし、人手不足に悩む企業では女性の雇用にも積極的になってきていて、女性向けの就職支援サービスも増えるなど、追い風も吹いています。

 この連載では、40代からキャリアを再スタートしたいあなたに向けて、何から始める? どんなスキルがあるといいの? といった様々な疑問に専門家がアドバイス。「セカンド・チャンス社会へ 妻が再就職するとき」の共著者である日本女子大学人間社会学部教授の大沢真知子先生に、メッセ―ジをいただきました。

大沢真知子
●プロフィール
日本女子大学教授
大沢真知子さん


南イリノイ大学経済学部博士課程修了。Ph.D(経済学)。シカゴ大学ヒューレット・フェロー、ミシガン大学助教授、亜細亜大学助教授を経て現職。著書に『女性はなぜ活躍できないのか』(東洋経済新報社)などがある。

 女性活躍推進法が成立し、女性に男性と同じ成長の機会を与えて、女性管理職をどう増やすかというのは、今、企業の喫緊の課題となっています。しかしながら、いきなり旗を振ってみたところで、一朝一夕に女性活躍はかないません。というのも、これまで女性を活躍人材としてきちんと育ててこなかったからです。両立支援制度は整ってきていますが、やりがいのある仕事を任せられることなく、成長できないのであれば、他人にかわいい子どもを預けてまで仕事を続けるインセンティブがありません。その結果、残念ながらいまだに多くの有能な女性が出産を機に家庭に入っていく状況が続いています。

 しかし、そうした女性たちも、子育てが一段落してくると、やはり「仕事をしたい」という希望がわいてくるようです。私の勤務する日本女子大学には、ブランクを経て再就職、再チャレンジしたい女性たちに向けてキャリア教育を行うリカレント教育課程があり、「再就職、再スタートをしたい。せっかくなら、自分のやりたいことがしたい。やりがいのあるキャリアを築ける仕事がしたい」と道を模索する女性たちが数多く集まってきています。

写真/PIXTA
写真/PIXTA

 彼女たちの再スタートにかける思いはとても熱く、切実なものがあります。ここで学んだ女性たちの多くは、大学のサポートを受けながら、1年間学ぶうちにそれぞれの希望にあった再就職先を見つけていきます。実際、彼女たちは潜在能力が高く、即戦力となる人材ばかりなのです。また、再就職というと、昔やっていた仕事と同じような仕事に就くというイメージがありますが、それとは別に本当にやりたいことをみつけてイキイキとしている人もいます。再就職は、新しい人生に向けての再スタート「セカンド・チャンス」だったのだと感じます。

 しかしながら、今、家庭にいて、自分の能力を活かして働きたい、社会に戻りたいと願う女性たちに対する再就職、再スタート支援の体制はまだ十分ではありません。しかし、今後そうした女性たちを人手不足に悩む企業にうまくマッチングできるようになっていけば、必ずや企業の成長を支える人材となりますし、そうした人たちが活躍できる「セカンド・チャンス社会」が実現すれば、社会はより活性化していくように思います。