「解決可能」な部分に焦点を絞る

■「性欲」ではなく「コミュニケーション」で考える

 Tさんの悩み相談という形で始めた話し合いの中で、「セックスの問題」に切り込む……。ともすればこれは、彼にとって「だまし討ち」のように感じられるかもしれません(そこまでしないと話し合いに応じない彼の態度にそもそも問題があるとは思うのですが……とりあえずそのことは措いておきます)。

 しかし、他ならぬ「妻の悩み」を放置することもできない……。おそらく彼の気持ちも揺れるはずです。そこで大切なことは、引き続き徹底して「彼の性欲の問題(生理的な問題)」に焦点化するのを避け、「私たちの悩みを解決したい」という姿勢を打ち出すことだと思います。

 なぜなら、共感図で考えたように、「性欲の問題」にした途端に「自分(たち)ではどうしようもできない」という諦めの姿勢が生まれまるからです。話し合いは、「自分たちでどうにかできる問題=コミュニケーションの問題」のレベルで行うのが望ましいと、筆者は思います。

 前回ご紹介した「新しいセックス」も、性欲というよりは、コミュニケーションでセックスレスを解決していくという方向性のアイデアでした。誤解してほしくないのは、性欲を軽視しているわけでは決してないということです。性欲は大切です。要は順序の問題で、「性欲→セックス」という従来型の「性欲任せの流れ」が滞ってしまっているのだから、楽しく濃密なコミュニケーションとしてセックスをスタートして、結果として性欲と愛情が高まる「新しいセックスの流れ」を試してみて損はないのではないかと思うのです。

 まずは「相手の性欲の悩み」ではなく「私の悩み」からスタートして、それを「私たちの悩み」として捉え直したうえで、「私たちのセックス」という問題に切り込んでいく。その際には、2ページ目で紹介した「新しいセックス」を二人で考えてみる……これが「伝わるメソッド」を活用したセックスレスの解決方法です。

■おわりに

 ここまで、恋愛で生じる問題の中でも極北に位置する「セックスレス問題」をサンプルに、その解決策を本書の「伝わるメソッド」を使って考えてきました。

 筆者としても「伝わるメソッド」を実際に活用するのは初めてのことだったので手探り状態だったのですが、やってみた実感として「こんなにシンプルで有効な方法は滅多にない」という手応えを感じています。本書の「伝わるメソッド」は、それだけ考え込んで作られたものなのだと思います。今回ご紹介できた「伝わるメソッド」は3つだけですが、残りの17メソッドも、恋愛や仕事のさまざまな場面で活躍しそうなものばかりです。

 なお、いま筆者が最も心配しているのは、このコラムによって本書の魅力がみなさんにきちんと「伝わっているか」どうかということです。そのことだけが本当に気がかりなのですが、ちょっとでも興味を持たれた方は、とにかく一度本書を読んでみてください。当たり前ですが、それが一番「伝わる」はずなので。

文=森田専務/桃山商事、写真=bee/PIXTA