“恋バナ収集ユニット”桃山商事の清田代表と森田専務が、恋愛の悩みに効く1冊を紹介していく新感覚のブックガイド『桃山商事の「恋愛ビブリオセラピー」』!

今回のお悩み
・相手の言葉を気にしすぎてしまう
・「このLINEの意味は何?」と迷ってしまう
・友達のアドバイスに引っ張られてしまう
・悩むとネットの恋愛コラムを読みまくる
・考えすぎてどうしていいかわからなくなる
そんな悩みに効く1冊

『触楽入門』とはどんな本か

■“触感”の専門家によるユニークな書

 こんにちは、桃山商事の清田です。今回は『触楽入門』という、ちょっと不思議な題名の本をご紹介します。

 タイトルに「触」という字が入っていますが、本書は“触覚”や“触感”といったものについて様々な角度から掘り下げた一冊です。

 著者は仲谷正史、筧康明、三原聡一郎、南澤孝太の4名で、それぞれ触感をテーマに活動を行う研究者やアーティスト。その彼らがユニットで行っているプロジェクトが「テクタイル」で、展覧会やワークショップ、ツール開発や出版など、多岐にわたる活動を通じて触感表現の可能性を追求しています。

 そんな“触感の専門家”たちによって書かれた本書が、なぜ恋愛に役立つのでしょうか。

■視聴覚に比べ、触覚が軽視されている現代

 突然ですが、みなさんはどんな触感が好みでしょうか?

 例えば私は、白菜の芯を切るときのザクッとした触感が結構好きです。あと、水にさらす前のお米を触るのも好きです。料理は全然できませんが、これらの触り心地は生理的に気持ちいいなと感じます。

 好きな香りや音があるように、誰にも“好きな触り心地”というものがあると思います。

 ところが、本書のまえがきにはこんな一節があります。

〈触感は、意識したり言葉にしたりすることがあまりない感覚ではないかと思います。(中略)私たちは、つねに全身でたくさんの触感を感じ続けているのです。しかし、普段はそのことを意識していません。あまりに身近すぎて注目されてこなかった感覚、それが触覚というものです〉

 確かに、「好きな感触は?」と問われてみれば前述のようにいろんな例が思い浮かぶわけですが、では普段どのくらい触覚を意識して暮らしているかというと、ちょっと心許ない気持ちになってきます。ヘタすると、「今スマホを持っている」ということすら意識していないかもしれません。

 さらに、本書の帯に「つねにネットに接続し、皮膚感覚を失ってゆく私たち。」という言葉もあるように、現代はテレビやインターネットによって「視覚」や「聴覚」がかつてないほど偏重されている時代となっており、情報の入口が目と耳に偏っていると言います。それによって身体性を意識する場面が減り、ただでさえ意識にのぼりづらい触覚がさらに忘れられてしまっている……。

 そんな現状に疑問を抱き、テクノロジーの力によって楽しみながら触覚・触感を取り戻そうというのがテクタイルの問題意識です。