“恋バナ収集ユニット”桃山商事の清田代表と森田専務が、恋愛の悩みに効く1冊を紹介していく新感覚のブックガイド!『桃山商事の「恋愛ビブリオセラピー」

今回のお悩み
・恋愛になると、相手のペースに巻き込まれて苦しむことが多い
・「女の幸せは結婚」など、旧来的な価値観にとらわれてしまう
・恋愛が「面倒くさい」ものに感じられてならない
・恋人はいるが、正直「幸福度」はあまり高くない
・自分の恋愛観がイマイチよくわからない
そんな悩みに効く1冊
『“ひとり出版社”という働きかた』
(編=西山雅子/河出書房新社)

この本がなぜ恋愛と関係あるのか

■近年業界で注目される「ひとり出版社」

 みなさん、明けましておめでとうございます。桃山商事の清田です。今年も“恋愛に関係ないけど、恋愛にめっちゃ役立つ本”をたくさん紹介していきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

 そんな2016年の1冊目に選んだのは、昨年7月に出版されて以降、じわじわと注目度を上げている話題の書『“ひとり出版社”という働きかた』です。

 これは文字通り「出版社」にまつわる本ですが、出版業界ではここ数年、一人きりで経営する“極小”規模の会社が増えつつあります。こういった出版社が作る書籍には、企画・編集・営業といった業務が一人の手によって行われるため、作り手の個性や熱意がダイレクトに反映された良質な作品が少なくありません。また、現代的な“小商い”の一種であり、「新しい働き方の実践者」として注目される存在でもあります。

 そんな「ひとり出版社」を取り上げた本書が、なぜ恋愛と関係あるのでしょうか。

■個性派揃いの出版社たち

 本書は、フリーランスの編集者・ライターである西山雅子さんが、10の出版社を訪ね歩いたインタビュー集です。

 良質な大人向けの絵本を作り続ける「小さい書房」や、44歳で他界したノンフィクション作家・井田真木子の著作を復刊させた「里山社」、“写真界の芥川賞”と呼ばれる木村伊兵衛賞受賞作をいくつも世に送り出している「赤々舎」に、『仕事文脈』というリトルマガジンが人気を集める「タバブックス」など、本書に登場するのは業界注目の個性派出版社ばかり。

 この本を制作していたとき、ちょうど長年勤めた児童書の出版社から独立したばかりのタイミングだったという著者の西山さん。フリーランスとしてどう働き、どう生き残っていくか。彼女は自身のこれからを模索しつつ、それぞれの話に耳を傾けていきます。

■ひとり出版社は“一人”じゃできない

 また、本書では“小商い”を「自分の信じる仕事を、自らの責任で、信じる人々とのつながりを築きながら成立させようとするビジネス」と定義していますが、ひとり出版社と言っても決して「一人でできる」仕事だというわけではありません

 当たり前の話ですが、一冊の本が読者の手に届くまでには、数多くの人間が関わっています。本を企画・制作する人(編集)、実際に本を執筆する人(著者)、本の装いを作る人(デザイナー)、間違いがないかチェックする人(校閲)、本を刷る人(印刷)、本を流通させる人(取次)、本を売る人(営業や書店)など、そこには様々な役割があり、チームプレーなしに本は作れません。

 ひとり出版社では、版元として制作コストを背負い、編集や営業といった業務を一人で担いつつ、社外のパートナーとも綿密にコミュニケーションを図りながら本作りの仕事を進めていきます。

 つまり、「何をするか」「どう進めるか」「誰と一緒に組むか」をすべて自分の責任と判断で選び取っていくのがひとり出版社の働き方というわけです。どうでしょう。こういった観点で本書を眺めてみると、少しだけ恋愛との関係が見えてくるような気がしませんか?