ことばをつくるプロ・ひきたよしあきさんによる「モヤモヤが晴れた空」連載。働く女性の身近に起こりがちな、モヤモヤと感じる出来事に“キャッチコピー”をつけることで新しい視点が得られ、私たちの心に明るい光を灯してくれます。数多くの「モヤモヤした気持ち」を抱えた女性たちから、親身に話を聞いてきたひきたさん。最終回は、モヤモヤを晴らした女性共通の特徴を挙げつつ、読者のみなさんへの温かいエールをいただきました。

 神社にお参りに行く。これは生まれる前の自分に会いにいくことだという話を聞いたことがある。

 鳥居をくぐって、参道を神殿に向かって歩いて行く。これは産道をさかのぼり、子宮の中へと戻っていく行為にあたる。玉砂利の音を聴き、葉むらに輝く陽光を感じながら、やがて神様の前へと立つ。それがすなわち生まれる前の自分と対面することだと言うのだ。

 そもそも自分は、何の目的のためにこの世にいるのか。

 そもそも自分は、過去に何をし、これからどう進んでいけばいいのか。

 そんなことを生まれる前の自分と対面して考える。

 その使命を果たすために、お力を貸してくださいと祈り、再び産道を戻り現世へと戻っていく。

 だから神社の参拝は、「新しく生まれ変わる」ことを意味する。

 これまでをチャラにして「新しいぞ、私は!」と再デビューするための装置が神社なのだ。

 パワースポット巡りや御朱印ガールなどが流行する背景には、日々の生活の中で、「やりなおしたい」「生まれ変わりたい」と思う人が多いせいではないだろうか。神社に書き残された絵馬などを読むとき、ふとそんな気がしてくる。

 「モヤモヤした気持ち」を抱えた女性たちにずいぶんとお会いしてきた。モヤモヤだけでなく、イライラ、カンカン、カリカリ、ツンツン、プリプリ、ピリピリ、プンプン、ムカムカ、ムッ、ヤキモキしている女性も数多くいた。

 彼女たちは、戦ったり、逃げたり、我慢したりしながら置かれた現状を打破しようと試みていた。重油の中を服を着たまま泳ぐような悪戦苦闘の末、生まれ変わった人もいた。破れて「さとり世代」のようにこれ以上プライドが傷つくのを恐れて、戦いを放棄した人もいた。

 色々な人にお会いして、結局、モヤモヤを晴らせた人には共通の特徴があるように思えた。