それは「自分と対話すること」である。

 現状を嘆いたり、自己嫌悪に陥ることなく、肩の力を抜いて、鏡の前に立つ。

 「おい、よしあき。そもそもお前は何がしたくて、今がんばっているんだっけ」と、鏡の中の自分を「生まれる前の自分の姿」に見立ててゆっくりと、リラックスしながら会話を楽しむ。

 「おまえってさ。昔はクラス中を笑わせていたよな」
 「あのコンサートに行ったのをきっかけに、この道に入りたいと思ったんだよな」
 「いつかは世界中の美術館巡りをしたいって言ってたよな」

 一番の親友と心置きなく話すように自分との会話を進めていく。

 これを意識的にやった人もいれば、無意識の中でやった人もいた。親や友人に言われて気づいた人もいれば、歌のワンフレーズからスルスルと思い出した人もいた。様々な形態があったけれども、モヤモヤを晴らした人は、多かれ少なかれ、「自分との対話」を頻繁にした人ではないだろうか。

 自分ととことん話こむと、周囲の声はどうでもよくなる。「そもそもの自分」に対し、イライラさせる対人関係など、「どーでもいいこと」に思えてくる。

 私はこの境地を「DDI(どーでもいい)」と言っているのだが、本来の自分に気づけば、嫌いな上司、複雑な人間関係、先の見えない将来などなどすべて「DDIだ」とレッテルを貼って気にしないようにする。

 モヤモヤした気持ちを晴らす一番の近道は、「自分」と語ることだというのがこの連載の結論だ。

 朝の神社でもいい。空気の澄み渡る山道でもいい。時間がなければ近所の公園でもいいだろう。手鏡をもって、そこに映し出された自分の顔を見てみよう。そしてにっこりと笑顔をつくり、「やぁ、元気そうだな」と語りかけよう。

 深呼吸し、背筋を伸ばして、歩きだせば、雲の割れめからあたたかい陽光がさしてくる。

 頭上に広がった「モヤモヤが晴れた空」は、きっとあなたの未来まで続いているはずだ。

今回のことば

「モヤモヤが晴れた空」

モヤモヤした気持ちを晴らす一番の近道は、「自分」とじっくり語ること。

写真=siro46/PIXTA