今年のお笑い・エンタメ界を振り返ると、どんな人が思い浮かびますか? 本連載「お笑いジャーナル」でも、ネクストブレーク必至の人から、安定した人気を誇る人まで、さまざまな人気者たちを取り上げてきました。年内最後の記事となる今回は、お笑い評論家のラリー遠田さんに、お笑い界の2017年を総括していただきました。

2017年にブレークした人といえば…… (C) PIXTA
2017年にブレークした人といえば…… (C) PIXTA

今年も女性芸人が大活躍

 2017年も終わりを迎えようとしています。今年もお笑い界ではいろいろな出来事がありました。いくつかのトピックに分けて解説をしていきたいと思います。

 まず、今年は例年以上に女性芸人の活躍が目立っていました。2月に行われたピン芸の大会「R-1ぐらんぷり」では、ファイナリスト12人中5人が女性芸人という異例の事態となり、12月には女性芸人限定のお笑いコンテスト「女芸人No.1決定戦 THE W」が開かれました。

 そして、何といっても、ブルゾンちえみさんの大ブレークも忘れられません。ブルゾンさんがまだ無名の頃、マツコ・デラックスさんは番組の予告編に一瞬だけ映っていたブルゾンさんの映像を見て、「この子は売れる!」と確信したそうです。ブルゾンさんの爆発的な売れ方は、これまでに前例がないものでした。

 特に、女性ファンに熱狂的に支持されたというのが珍しいパターンでした。キャリアウーマンのキャラクターを演じるブルゾンさんのメイク、ファッション、ポージングなど、あらゆる要素が絶妙なツボを突いていました。渡辺直美さんと並んで、一種の「ファッションアイコン」として同性に受け入れられている新しいタイプの女性芸人だと言えるでしょう。

「癒やし系芸人」ブームの兆し

 ブルゾンさんに負けないくらいの大活躍を見せていたのが、ANZEN漫才のみやぞんさんです。噛み合わない会話の受け答えだけで笑いが取れる「おバカキャラ」でありながら、驚異的な身体能力とセンスを持ち、運動や楽器の演奏に非凡な才能を発揮しています。「世界の果てまでイッテQ!」では、世界各地で難易度の高いコマ回しなどの妙技に挑戦して、ことごとく成功を収めてきました。

 そんなみやぞんさんの魅力は、飾らないとぼけたキャラクターです。今年、みやぞんさん以外にもこの手の「癒やし系芸人」が何組か出てきていました。例えば、女性ピン芸人のいかちゃんは「女性版みやぞん」とも呼ばれる期待の星。テーブルの上でカップを鳴らしながら人のいいところを言う、という癒やし系のネタで一躍有名になり、数々のバラエティー番組に出演しました。

 また、「ポストおかずクラブ」との呼び声も高い女性コンビ・ガンバレルーヤも、今年、大阪から東京に出てきて、じわじわと人気を伸ばしています。彼女たちの頬を赤く塗ったメイクはインパクト抜群。大阪時代からずっとコンビで一緒に暮らしており、二人の仲の良さにも癒やされます。特に気の利いたことを言わなくても、そこにいるだけで場を和ませることができる「癒やし系芸人」は貴重な存在です。