隙のなさがアンチを生む―そのわけは

 それは恐らく、あまりにも隙がなさすぎる、というのがひとつの理由ではないかと思います。西野さんの文章というのは、文体も内容もしっかりしています。自分のやっていることや考えていることを説明するときに、理屈のスジがまっすぐ通っていて、一分の隙もありません。

 しかも、隙がないのは口だけではありません。西野さんは恐ろしいほど有言実行の人でもあります。ブログを書きながらも、テレビに出て、舞台ではコンビとして漫才をやり、個人で独演会を開き、絵本を描き、芝居の脚本も書き、それ以外にもさまざまな創作活動やプロデュース業を手がけているのです。10月に出版された4冊目となる絵本『えんとつ町のプペル』(幻冬舎)は現在ベストセラーになっています。極細のペンでひたすら細密に描き込まれたその絵本は、1枚の絵を仕上げるのにも膨大な時間がかかります。何しろ、1冊目の絵本である『Dr.インクの星空キネマ』(幻冬舎)を仕上げるまでには5年の歳月を要したそうです。

 ブログなどの文章だけを見ていると、傲慢でいけすかない人物というふうにも思われかねないのですが、実際の西野さんは、その自信に見合うほどの地道な努力を重ねており、さまざまな分野で結果を出し続けています。そんな彼は、多くの人にとっては得体の知れない不思議で不気味な存在なのだと思います。だからこそ、その薄気味悪さを「嫌い」という感情に置き換えて処理しているのではないでしょうか。